野ボール横丁BACK NUMBER
「もう勝てねえのかな…」高校野球から“消えた名将”がポツリ あの甲子園“奇跡の2連覇”監督は今…記者が見た「8連敗、2部降格…大学野球で苦しむ姿」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/15 11:07
2005年、夏の甲子園「2連覇」を達成した駒大苫小牧。奇跡のチームを率いた名将は今
初回に2点を奪った駒澤大は2-1とリードしたまま終盤を迎え、9回表、代打の切り札といっていい倉重和宏のソロホームランで3-1とリードを広げる。マウンドには7回から146km左腕のエース・高井駿丞が上がっていただけにそこまでは盤石の試合運びだった。
ところがその裏、先頭打者にソロホームランを打たれる。1点差となった。その後、2アウトまでこぎつけ、逃げ切るかに思われたが、7番打者にもこの回2本目となるソロホームランを許し、土壇場で3-3の同点に追いつかれてしまう。勝負はタイブレークに持ち込まれ、延長11回裏、3-4でサヨナラ負けを喫した。
先発し、6回まで1失点で抑えた現エースの仲井慎はベンチで呆然としていた。
ADVERTISEMENT
「高井さんはそんなにホームランを打たれるピッチャーじゃなかったし、1回に2本も打たれるなんて。僕は『後はお任せします』っていう感じで交代したんですけど……。まさかでしたね。今にして思うと、まだ、チームが1つになっていなかったのかなという気はします」
香田もベンチでしばらく動けなかったという。
「2本とも完璧な当たり。長打だけ警戒すればいいところで、いちばん飛んで行くところに投げてしまった。うちの看板選手がああなるっていうことは、俺の野球が薄っぺらだったということ。いい感じで夏を過ごしたつもりになっていたけど、伝わるようで伝わっていなかった。俺の野球はこの程度なんだって、突き付けられた感じがしたね。まだ、ぜんぜんダメなんだ、って」
「2.9連覇」も…なぜ高校野球から“消えた”?
香田が脚光を浴びたのは、もう20年も前のことになる。駒大苫小牧高校を率い、2004年から2006年にかけて、夏の甲子園で優勝、優勝、準優勝という、道民が「2.9連覇」と呼ぶ快挙を成し遂げた。まだ東北や北陸などの雪国のチームが一度も全国優勝していない時代だったこともあり、最北の都道府県チームが起こした奇跡に日本中が驚いた。
そのころ、香田は真顔でこう語っていたものだ。
「俺が打てって念じると、本当に打つんだよ」
また、こんな話もしていた。


