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「もう勝てねえのかな…」高校野球から“消えた名将”がポツリ あの甲子園“奇跡の2連覇”監督は今…記者が見た「8連敗、2部降格…大学野球で苦しむ姿」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/15 11:07
2005年、夏の甲子園「2連覇」を達成した駒大苫小牧。奇跡のチームを率いた名将は今
「見えないけど、なんかあるよね。勢いとか運とか。甲子園は独特。ただ、甲子園だからって、特別なことは何もしない。究極のところまで追い込んで最高の状態に仕上げたら、あとは『行け』って言うだけ。そうしたら、魔法にかかったような感じでパーッと勝ち上がっていっちゃうんだよ」
04年夏の決勝、済美戦では4点差、3点差と二度引き離されながらも追いつき、最後は13-10で突き放した。05年夏の準々決勝、鳴門工戦では7回に5点差を一気にひっくり返し7-6で勝利。06年夏の3回戦、青森山田戦でも最大6点差を終盤に逆転した。
駒大苫小牧がファンの心をつかんだのは強いだけではなかった。香田が話すように、勝ち方が神がかっていたのだ。
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そんな過去を知っているだけに駒澤大に就任してからの香田の戦い振りを見つつ、あの神通力がすっかり失せてしまったのだろうかと思えて仕方がなかった。
香田は自分の念が通じなくなった理由をこう語る。
「普段から、一体になっていなかった。だったら、当然、こうなるよねって思ったよ」
神通力の正体。それは香田いわく一体感なのだ。
◆
駒大苫小牧時代の香田はある意味で、勝ち過ぎた。地元の英雄に祭り上げられたことで学校内では孤立し、2008年に駒大苫小牧を去る。そして、駒澤グループと同じく曹洞宗と密接な関係にある鶴見大で4年間、雌伏の時期を過ごした。
香田が選んだ指導者の第2ステージは社会人野球だった。

