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世界バレー4位は“合格点”か「最後まで諦めない」新生・女子バレー 石川真佑ら躍動もメダル逃す…それでも未来を照らす“3つの理由”
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVolleyball World
posted2025/09/08 11:05
バレーボール世界選手権3位決定戦でブラジルに敗れた日本。同大会15年ぶりとなるメダルにあと一歩届かなかった
そして3つ目が、キャプテン石川の存在だ。
もともと言葉で引っ張るタイプではないが、アクバシュ監督は国内外を含む豊富なキャリアをもつ25歳の石川を新主将に指名した。抜群の身体能力とスパイク技術を備えているにもかかわらず、大一番での勝負弱さが課題であると指摘され続けてきた石川が、今大会では「プレーで引っ張るのが仕事」と話した通り、ここぞという場面で得点を決め切ってチームを勝利に導いた。
ブラジルとの3位決定戦。敗れた直後の円陣では自らの責任を背負うように顔を覆う姿もあったが、すぐに顔を上げると、涙を流す選手たちの肩を抱き、声をかけて回っていた。涙を堪えて笑顔で声援に手を振る姿は、チームを一つにまとめるために尽力する強く、逞しいキャプテンの姿そのものだった。
真剣勝負で見つかった“課題”は?
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新監督のもと、「土台をつくる」という言葉からスタートした新シーズン。ネーションズリーグ、世界選手権でともに4位という成績は合格ラインと言える。ただ、当然ながら見るべき現実もある。
世界選手権ではブラジル、イタリア、中国、トルコ、アメリカといった世界ランク上位国とは準決勝まで当たらない抽選に恵まれた。予選リーグでは3連覇のかかるセルビアと同組だったが、主砲で世界的オポジットのティヤナ・ボシュコビッチが負傷欠場している。
大会中には課題も散見した。攻撃面は手応えを感じさせるシーンが数多くあったものの、勝負所ではトスがサイドに集中し、ブロックされるシーンも目立った。さらに言うならば、ブラジル戦でのエース勝負における佐藤の気迫には目を見張るものがあったが、それを上回るほどの鬼気迫る表情でチームを鼓舞するガビの強さと迫力は圧巻だった。
まだまだこれから。始まったばかり。むしろ、日本代表としてどう戦うかを明確に打ち出し、全力を出してぶつかり合えたからこそ課題が見つかった。
力と力でぶつかり合い、情熱を燃やし、1点を求める。獲れなかった1点に全力で悔しがる。この経験は間違いなく選手たちの力になる。そして何より、日本の女子バレーは「面白い」と思わせる戦いを見せられたことが大きな収穫だった。
世界選手権の悔しい経験は、これからへとつながる確かな希望だ。


