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世界バレー4位は“合格点”か「最後まで諦めない」新生・女子バレー 石川真佑ら躍動もメダル逃す…それでも未来を照らす“3つの理由”
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田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVolleyball World
posted2025/09/08 11:05
バレーボール世界選手権3位決定戦でブラジルに敗れた日本。同大会15年ぶりとなるメダルにあと一歩届かなかった
1つ目は、自分たちの長所を活かすバレーボールへの変化だ。
世界の強豪国と比べて身長で劣る日本は、高さに対抗するために攻撃時は“速いトス”を求めるケースが多かった。もちろん速いトスを得意とする選手もいたが、一方でピンポイントでボールにヒットすることが必要な速いトスに固執するあまり、コースの打ち分けができず、長所が消えてしまう選手もいた。昨季からイタリアでプレーする石川も「トスが速すぎて打てない」とスランプであることを口にしたこともあった。
そこでアクバシュ監督は“速いトス”だけに頼らず、相手ブロックの枚数を減らすために攻撃陣に複数の場所から一斉に攻撃することを求めた。
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アウトサイドヒッターには石川や佐藤淑乃、オポジットの和田由紀子と、高いトスを高い打点からしっかり叩いて打つことを武器とする選手が揃う。さらにミドルブロッカーにはもともとアウトサイドヒッターの経験を持ち、速いトスだけでなく高いトスも打ち切れる島村春世、宮部藍梨がいる。前衛からの攻撃に加え、バックアタックにも多彩な攻撃陣が並べば、相手のブロック枚数よりも攻撃の選択肢が上回る。そうなれば、ブロックの高い相手にも突破口は開ける。実際にネーションズリーグや世界選手権でもブロックを武器とする相手に対して力で十分渡り合った。
リザーブも輝く全員バレー
2つ目が役割の明確化だ。
ディフェンス面ではリベロの小島満菜美が後方から的確に指示し、ブロックと連係してボールをつなぐ。そしてレシーブが上がれば、たとえハイセット(セッターが定位置から離れた場所であげるトス)でも石川や佐藤がミスを恐れず打ち切る。また、サーブから攻めてディフェンスから得点へつなげるスタイルは、近年の男子バレー日本代表が世界と対峙してきた必勝パターンと同じ形だ。
役割を果たすという面で言えば、スタメンで出場する選手だけでなくリザーブの力も大きかった。ブラジル戦の3セット目からスターターで起用されたセッター中川つかさは、打つポイントやコースを選択できる伸びのあるトスで佐藤を覚醒させ、その佐藤はブラジルのブロックに対しても臆せず勝負し、打ち勝った。
中川だけでない。本職はリベロながらリリーフサーバーで投入され好守を連発した岩澤実育。どれほどのキャリアがあっても緊張の伴う初戦でスタメン出場し、高さを武器に和田とは異なる攻撃のアクセントを加えた19歳の秋本美空。流れを変えるサーブとディフェンス力を発揮した21歳の北窓絢音。それぞれの果たすべき役割が明確になっていたことも大きい。



