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甲子園の風BACK NUMBER
「正直嬉しくはないです。でも」逆転サヨナラ満塁弾を今も聞かれ…甲子園で悲劇の左腕・寺沢孝多が「プロが目標」と簡単に口にできない理由
text by

間淳Jun Aida
photograph byYAMAHA(ヤマハ野球部提供)
posted2025/09/03 11:02
星稜高校時代、奥川恭伸の2番手投手だった寺沢孝多。逆転サヨナラ満塁弾を浴びるなどの甲子園を経て、今は何をしているのか
大卒社会人2年目の今年は、プロ野球のドラフトで指名される権利も得る。プロは寺沢が憧れてきた舞台。だが、星稜、近大、ヤマハとプロ野球選手を多数輩出している環境でプレーしているからこそ、「プロを目標」と簡単に口にできない現実がある。
「プロへ進む選手を身近で見てきました。どのくらい高いレベルなのか理解していますし、そのレベルに自分が達していないことも分かっています。それだけすごい選手でもプロで苦しんでいる姿も見ています。プロに入ったらゴールではなく、その先に活躍することを考えると、相当厳しい世界だと感じています」
「あの1球」を忘れることはないからこそ
寺沢は星稜の同級生・奥川恭伸や近大時代の先輩・佐藤輝明(現・阪神)をはじめ、プロへ進む選手たちを間近で見てきた。その存在は心強いチームメートであり、自身の成長につながる刺激でもあった。一方で、プロのレベルを思い知らされる現実にもなったと語る。
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「プロに入って活躍できるようなきっかけをつかんで覚醒できたら理想ですが、なかなか難しい部分があります。今は1日1日、一生懸命に野球と向き合い、長く野球を続けたいと思っています」
寺沢が野球を続ける限り、「あの1球」を忘れることはないだろう。現役を引退してからも、高校野球ファンの間では名場面として語り継がれるだろう。そして、絶望を成長につなげ、アマチュアでもプロでもカテゴリーを問わず歩みを進める寺沢の姿は当時を知る人たちの心を動かす。甲子園の“延長戦”は続いている。〈第1回からつづく〉

