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広陵問題の高野連対応「なぜ“隠蔽”だと言われ炎上したか?」野球界の暴力問題に“7つの提言”「転校後の出場停止が長すぎ」「被害者が納得する報告書を」
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/01 11:03
出場辞退に関する記者会見の冒頭、頭を下げる広陵の堀正和校長(右から2人目)ら
高野連の対応はなぜ「隠蔽」だと言われ炎上したか?
――高野連の対応にも批判がありました。今回の件を踏まえ、高野連についてはどうお考えですか?
「後から振り返ると、高野連の対応もよくなかったと思います。不祥事を起こした学校は報告書を高野連に出しますが、大きな事件だと判断された場合は、日本学生野球協会の審査室が処分を決めます。この手続きには学生野球における“司法権の独立”という意味があり、現場と離れた第三者が内容を見て客観的に判断する仕組みになっているのです。
一方で、不祥事が公表されると処分を受けた生徒や監督、コーチは基本的にはかなり社会的制裁を受けます。高野連としてはあまりそうしたくないので、微細なケースは厳重注意で収めて、公表しないという方法を取っています。ガイドラインに基づいた対応をしてはいるので、広陵のケースでも手続き的な瑕疵があるわけではないんです。
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でも社会的にはそう受け取られず、隠蔽と言われて炎上することになりました。公表するかしないかの判断基準が、少なくとも世間の理解を得られるものではなかったことはたしかで、加害部員が処分されたことが明確に表に出ていれば、おそらくここまでの騒動にはならなかったはずです。公表するかどうかの線の引き直しはかなり重要だなと感じています」
忘れてはいけない「無関係の部員が野球をする権利」
――いろいろな仕組みの面で改革することが重要なのですね。
「そうですね。同時に今回の件で思うのは、広陵高校野球部は問題を抱えているし対応もまずかったし、加害部員にも問題がある。ただ忘れられがちなのは、関係ない部員もいるんですね。彼らの野球をする権利が取り上げられていいわけではないはずです。改善すべきところは改善する。それとは別に、今回のインターネット(SNS)の炎上で被害を受けた部員もいるということはとても重要なことだと思っています」
――今後を考えるうえで、そのほかに思うことはありますか?
「広陵高校の野球部の存続がどうなるか、という話ではなく、このままでは野球という競技の人気がなくなり、やりたい子供たちがいなくなってしまうんじゃないか、という大きな問題だと思っています。やって面白い、楽しいスポーツとして続いていくためには、野球界が変わっていかなければならないと思っています」

