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「朝4時まで紛糾…突然の棋士生命延長制度」元A級棋士が見た“順位戦舞台ウラ”「今期は羽生善治も谷川浩司も」タイトル獲得棋士がB級2組にズラリ 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2025/08/14 11:01

「朝4時まで紛糾…突然の棋士生命延長制度」元A級棋士が見た“順位戦舞台ウラ”「今期は羽生善治も谷川浩司も」タイトル獲得棋士がB級2組にズラリ<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

タイトル通算99期の実績を持つ羽生善治九段。現在は順位戦B級2組で戦っている

 フリークラスが新設されると、主に年配の棋士たちが転出し、C級2組の人員は40人台に減っていった。ただ残された若手棋士の間で激しい競争が繰り広げられ、若くして降級・フリークラス転出を余儀なくされた棋士もいた。

 順位戦改革特別委員会(有志の棋士たち、名人戦を共催する毎日新聞社・朝日新聞社の担当記者で構成)は定期的に開かれてきた。2019年には昇級・降級枠を広げる規定が提案された。その改正案は同年の連盟総会で承認された。

羽生、谷川…B級2組の26人中10人がタイトル経験者

 B級2組、C級1組の昇級者は2人から3人に、B級1組の降級者は2人から3人に増えた。新陳代謝がよくなったことで、若手精鋭が昇級しやすくなった。その一方で降級率が23%のB級1組では、若い世代に押されてタイトル経験者の降級が相次いでいる。

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 今期のB級2組に在籍する26人の棋士のうち、10人がタイトル経験者なのだ。

・羽生善治九段(54=元七冠)
・三浦弘行九段(51=元棋聖)
・丸山忠久九段(54=元名人)
・屋敷伸之九段(53=元棋聖)
・木村一基九段(52=元王位)
・谷川浩司九段(63=元名人)
・深浦康市九段(53=元王位)
・郷田真隆九段(54=元王将)
・久保利明九段(49=元棋王)
・藤井猛九段(54=元竜王)

 かつてA級に在籍し、タイトル戦で活躍したレジェンドたちだ。往年の強さを発揮し、復帰昇級することを期待したい。

 順位戦改革特別委員会は現状の問題点として、C級2組の昇級枠を検討しているという。1977年度以来、約50年も3人のままだ。4人に増やすことに、私は大いに賛同したい。C級2組の平均人員は、今期の56人を含めた直近5年で55人。昇級率は5%で、ほかのクラスに比べてかなり低い。

 その中でタイトル戦に登場、全棋士参加棋戦で優勝した棋士は5人いる。※50代以上の棋士は除く。

・金井恒太六段(39=叡王戦で決勝)
・佐々木大地七段(30=王位戦、棋聖戦で挑戦)
・杉本和陽六段(33=棋聖戦で挑戦)
・本田奎六段(28=棋王戦で挑戦)
・八代弥八段(31=朝日杯で優勝)

 また、過去10年で次点になって昇級を逃したのは、佐々木七段(3回)、梶浦宏孝七段(3回=30)らがいる。実力と実績がありながら、順位戦でC級2組に留まっているのは、勝負運に恵まれていないといえる。しかし、ひとつ昇級することで大きな自信となり、さらなる躍進につながっていく。腐らずに頑張ってほしい。第1回からつづく

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「藤井聡太は5期でA級だが」名人経験者でも昇級に苦しみ…順位戦の“シビアな世界”「単年の不調では死活問題」だからこそできた降級点制度

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