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将棋PRESSBACK NUMBER
「つまり経験値が激減しているのでは」藤井聡太23歳&永瀬拓矢33歳の研究会が1年以上もやっていないから…トップ棋士が注目する“ある要素”
posted2026/03/08 06:02
藤井聡太王将に対して、永瀬拓矢九段はタイトル奪取まであと1勝に迫っているが……立会人を務めた稲葉陽八段の見解は?
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
日本将棋連盟
永瀬拓矢九段(33歳)は藤井聡太六冠(23歳)に各種タイトル戦で何度もはね返されながら、2026年の王将戦でタイトル奪取へ「あと1勝」としている。2人の戦いぶりと星取りの背景は、トップ棋士の目を通してどのように見えているのか。王将戦第4局の立会人を務め、竜王戦1組9期、順位戦A級8期の実績を持つ稲葉陽八段に聞いた。〈全2回〉
最も印象に残った“永瀬の角打ち”とは
――王将戦第4局は、初日の昼休後に永瀬九段が54分考えて角を8四に打ちました。この辺りから永瀬九段が本格的に時間を使い始めています。
「その角打ちは将棋ソフトも推奨していました。部分的にこういう筋があるのは永瀬九段も知っていたけれど、研究した局面と少し違ったので時間を使って考えていたのかもしれません。この角に対して先手は4八の金を5八に寄り、後手は5五の天王山に桂を打ちました。かなり踏み込んだ手順なので、部分的にでも事前に知っていたのではないかと推測します。永瀬九段はこういう順をその場の思いつきだけで指す棋士ではないと思いますので」
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――この段階で持ち駒の角と桂を手放すのはかなり勇気がいるように見えるのですが?
「そうですね。私が本局で最も印象に残った手がこの角打ちです。やはり打ちにくいので。意味を説明すると、先手は次に▲5六歩と突くとかなりの好形になります。『歩越し銀には歩で対抗』の格言通り、5四の銀を追いやすくなります。そこで後手は▲5六歩とすぐに突けないように角を8四に打ちました。歩を突けば4八の金を取られてしまいますから。そこで先手は4八の金を角筋から避けて5八に寄り、後手は天王山に桂を打ちました。▲5六歩の好形を許さないという目的を一貫しています」
桂打ち自体が痛いというより
――ただ感想戦を見る限り、永瀬九段は自信を持って桂を打った感じではなかったようでしたね。

