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藤井聡太23歳は「桁違いの読みなのに不思議なのは」「まるでマシン」絶対王者に3連敗…杉本和陽33歳が激白「すぐ斬られるんじゃないかと」

posted2025/08/10 11:00

 
藤井聡太23歳は「桁違いの読みなのに不思議なのは」「まるでマシン」絶対王者に3連敗…杉本和陽33歳が激白「すぐ斬られるんじゃないかと」<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

棋聖戦で藤井聡太七冠と相まみえた杉本和陽六段。全3局の率直な心境を語りつくしてくれた

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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日本将棋連盟

藤井聡太七冠(23歳)の将棋と向き合う棋士は何を感じるのか。初のタイトル挑戦となった棋聖戦で絶対王者に挑んだ杉本和陽六段(33歳)が単独取材に応じてくれた。〈NumberWebインタビュー/第3回の1回目。初出以外の肩書・段位は省略〉

今までの人生で感じたことのないような疲労が

 タイトル戦はすべての棋士にとって憧れの舞台である。経験できない者のほうが圧倒的に多い中、杉本和陽六段はキャリア9年目にして、6月に開幕した棋聖戦五番勝負で初めてのタイトル戦に出場した。相手は、棋聖5連覇中の藤井聡太である。

 結果は3連敗で敗退。最強棋士の壁は厚かったが、濃く対峙した経験はかけがえのないものになった。シリーズが終わってから10日後、杉本はしみじみと語った。

「全てが非日常でした。対局が終わって帰ってきた時には、今までの人生で感じたことのないような疲労がありましたね。ただ『また出たいな』という気持ちになる場所でした。あの素晴らしい舞台に立つためには、日常を地道に努力していくしかないんだと思わされました」

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 大きな注目を集めたシリーズだった。それは杉本が振り飛車党だったこともあるだろう。振り飛車は駒組みがわかりやすく、相手の意思に関係なく実現しやすい作戦なのでアマチュアに人気がある。ただAI(人工知能)の評価がそれほど高くないので、苦労の多い戦型とも言われている。最高の舞台で最強の棋士を相手にどんな振り飛車を披露するのか。やりがいとともにプレッシャーもあっただろうし、独特の苦労も味わったはずだ。

 杉本はどんなことを考え、何をつかんだのか。藤井聡太という棋士からどんなことを感じたのか。そして振り飛車党としての思いは――。

 全3局を3回に分けて、たっぷりと語ってもらった。符号はほとんど出てこないが、棋譜を見ることができる方はこのインタビューを読んだ後にぜひ並べてほしい。本来、棋士の思いを深く知るには、棋譜を読み解くのが一番なのだ。本稿が棋聖戦の理解の補助線になれば幸いである。

藤井棋聖と実力にかなり差はあることはわかっていた

――杉本さんは振り飛車党です。居飛車党である藤井棋聖の対振り飛車の棋譜をチェックしたと思いますが、傾向などはつかんだのでしょうか?

「一応は見ましたけど、対振り飛車はサンプルが少なく、最近だと菅井竜也八段との将棋が中心でした。ただそこから傾向をつかもうとはしなかったです。藤井棋聖は割とAIの最善を追究されるタイプだと思うので、こちらも過去の棋譜にこだわるのではなく、序盤の定跡をアップデートしていきました」

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