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阪神独走を支える“育成の方法論”とは? 森下翔太ら「大卒即戦力」補強と「少数精鋭に12球団最多の実戦機会」…成功の理由と懸念
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/04 17:05
森下翔太ら即戦力選手がチームを支えて今季独走する阪神。高卒野手が育たない問題はあるものの、全体の育成戦略は成功していると言えるだろう
今季は育成を増やした阪神の方針は?
そして2025年開幕の時点で、阪神は育成選手を13人にまで増やしている。
そのうち、外国人が4選手。2024年育成ドラフトで指名した4選手は、独立リーグから3人、ファーム球団だけのくふうハヤテから1人。球団本部長の嶌村聡は、2024年1月24日付の日刊スポーツでのインタビューで「大学生や独立リーグの選手に関しては、(プロは)高いレベルへの挑戦という形になる。一方で高校生の場合はよりハイレベルのアマ野球、独立リーグで人格形成しながらスキルアップした方がより良い選択肢になるかもしれない」という理由から「高校生のドラフト指名の基本は支配下」という球団の基本方針を掲げている。つまり阪神の育成契約は、育てるという観点よりは、1軍の予備軍、スペアとしての色合いが、どうしても強くなる。
だから、という繫げ方は妥当ではないかもしれないが、2025年の開幕スタメンを見ても、先発メンバー9人中、大卒、社会人出身者が8人。唯一の高卒となる外野手の前川右京(智弁学園高)は2024年に116試合出場、打率.269、4本塁打、42打点と、待望久しい“高卒・生え抜き野手”としての大きな飛躍が期待されたが、守備面を重視する藤川球児新監督のチーム方針もあってか、前半戦終了の7月21日現在、60試合出場、打率.231、0本塁打、9打点と、殻を破りきれないもどかしさが漂っている。
ようやく見出した阪神スタイルのチーム作り
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これだけを見て、相変わらずの育成下手、などというレッテルを貼ろうという悪意は持っていないが、やはりファンの注目度が格段に高く、常に結果が求められるチームの中で、ポジションにはめ込み、我慢して使うというやり方は難しいのだろう。それでも近本光司、大山悠輔、佐藤輝明、森下翔太ら、昨今のドラフト上位補強の的確さで、1軍のチーム力を保ち続けている。
現状の阪神は「ソフトバンク・巨人」型ではなく、少数精鋭、特定の選手に英才教育を施す「ヤクルト・日本ハム」型の育成方式が、ベターな形だと言えるのだろう。
この“好サイクル”が崩れたとき、あるいは前述の主力級が2025年のヤクルトのように軒並み離脱するようなことが起これば、阪神は一体どうなるのかという邪推をしてしまうのだが、そのことはいったん、脇に置いておいて、2025年の前半戦の戦いぶり、セの他5球団を引き離す独走状態を見ていると、昨今の阪神は、ついに自らの環境と特色に応じたチーム作りの方針を見いだしてきたのかもしれない。
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