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「首位阪神に10ゲーム差」巨人は、なぜここまで落ちてしまったのか? 岡本和真の離脱で“4番不在”の影響「現実的には2位確保が目標か…」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/07/25 19:14
前半戦を終え、首位阪神に10ゲーム差をつけられ3位に甘んじている巨人・阿部慎之助監督
岡本にメジャー移籍志向があるのは、本人も認めるところだ。球団もここ2、3年は近い将来にポスティング移籍を認める方向で動いていたはずだ。早ければ今オフにも岡本の移籍が実現する可能性もあり、岡本に代わる4番打者の補強は、チームにとって火急の課題だった。岡本不在というこの現実は、チームにとって非常に近い未来に予想できていたことなのだ。
阿部監督が昨オフにフリーエージェントとなった阪神・大山悠輔内野手の獲得に動いたのは、そんな事情があったからだとも聞く。しかし最終的には大山獲得は成功せず、岡本の穴を埋められる4番候補は依然として不在なままだった。
その現実が岡本のアクシデントでシーズン中に突きつけられた結果が、今の巨人だということなのである。
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「エースと4番は育てるものではない。出会うもの、勝手に育つもの」という冒頭の野村さんの言葉が突き刺さる。ただ、この言葉と同時にノムさんはだからこそ、スカウティングと補強の大切さを語っている。
投手で言えば速い球を投げる、空振りを奪える切れのある特殊球を持っている。打者ならば遠くに飛ばせる絶対飛距離を持っている。そういう潜在能力を持つ選手を獲ってくることで、選手は育ってくる。だからそういう素材を探して、獲得してくるのがスカウティングであり、そういう素材がいなければその穴を埋めるのが補強だということだ。
巨人とすればドラフトでのクジ運の悪さもチーム編成に大きな影を落としているのは確かだ。少なくとも阪神の佐藤やヤクルト・村上宗隆内野手らを指名はしたが、抽選で外して2人は両球団に入団した。
浅野、石塚などスター候補生はいるが…
一方でファームを見回せばケガで離脱中の浅野翔吾外野手や、昨年のドラフト1位指名の石塚裕惺内野手ら打線のスター候補生はもちろんいる。ただ、果たして長打力があって4番を打つ可能性のある打者はいるのか。浅野や石塚は、どちらかというと3拍子揃ったセンスのある好打者で3番や1、2番タイプだろう。スラッガーとしては“ロマン砲”と言われるフリアン・ティマ外野手らの名前も上がるが……そのための外国人補強だったが、そこがうまく機能しなかった。
7月21日の阪神戦では秋広優人内野手と大江竜聖投手をトレード出し、ソフトバンクから獲得した砂川リチャード内野手の同点3ランで5点差をひっくり返してサヨナラ勝ちをした。リチャードもこれまた“ロマン砲”ではあるが、果たして4番候補になり得るかと言えば、まだまだそこまでは期待できないのも現実だろう。
