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「首位阪神に10ゲーム差」巨人は、なぜここまで落ちてしまったのか? 岡本和真の離脱で“4番不在”の影響「現実的には2位確保が目標か…」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/07/25 19:14
前半戦を終え、首位阪神に10ゲーム差をつけられ3位に甘んじている巨人・阿部慎之助監督
答えは簡単で4番の岡本とエースの戸郷翔征投手が機能しなかったことに尽きる。
ただ投手陣に関して言えば戸郷の大スランプはあったものの、山﨑伊織投手が前半戦だけで8勝(2敗)の防御率1.07で、戸郷に代わる“エース”として働き、赤星優志、フォスター・グリフィン両投手もローテーション投手として機能。何より大勢投手からライデル・マルティネス投手へという勝利の方程式を武器としたリリーフ陣の存在もあり、戸郷不振をカバーできる戦力はあった。
そこは阪神とほぼ互角の戦いができている。
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それだけに余計に目立ってしまったのが、4番・岡本の離脱だったのである。
岡本がケガで離脱したのは5月6日の阪神戦。一塁の守備で阪神・中野と交錯して、左肘の筋挫傷でチームを離れることになった。そこまでの岡本は32試合で打率3割8厘、8本塁打、25打点というキャリアハイを目指せる好成績を残していた。
しかし岡本離脱後の57試合でチームは25勝30敗2分けと5つの負け越し。特に目立ったのが得点力の低下で、1試合平均得点は離脱以前の3.19から2.49と3点を取れない打線になってしまっている。阪神の快進撃もあったが、これではいくら投手陣が踏ん張ったとしても、一気に突き放されてゲーム差は開いていく一方なのは当然の結果だったと言えるだろう。
巨人の今季最多本塁打は依然、岡本
もちろんその岡本離脱は不運なアクシデントだった。
ただ、である。
果たしてこの現実は不運なアクシデントとしてだけで片付けて良いのか。問われなければならないのは、岡本が離脱したときに、4番を任せられるような期待感のある打者がいなかったというチームの現実なのではないだろうか。
もちろん日々、打線は組まれ、毎日の試合では誰かが4番を打っている。岡本離脱後は吉川尚輝内野手、トレイ・キャベッジ外野手、大城卓三捕手に丸佳浩外野手、増田陸内野手に坂本勇人内野手と実に6人の打者が4番を任されてきた。もちろん阿部慎之助監督らベンチとしては4番を固定して、オーダーを組むのは理想のはずだ。そこを模索して日々、打線を組んでいる。しかし何せ、納得して多少は我慢してでも4番に固定できるような打者が、残念ながら今の巨人にはいないのだ。
すでに岡本が打線からいなくなって57試合が経過しているが、今でもチームの最多本塁打は岡本の8本である。岡本と並ぶチーム最多の8本塁打をマークするのがキャベッジだが、岡本離脱後は打率2割1分4厘の3本塁打。ファーム落ちが続く2年目のエリエ・ヘルナンデス外野手を含めて、外国人打者が期待通りの働きができていないことも打線が固定できない一因となっている。
岡本の穴を埋める“4番候補”はいまだ不在
そして見逃せないのは、この“岡本不在”という問題は、実はここ数年の巨人の補強の隠れテーマだったということだ。

