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「不安しかありません」NHK退局後の本音…豊原謙二郎アナ52歳はなぜ“1人会社の社長”になったか「青臭いですが」背景に“尊敬する2人と53歳”
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNanae Suzuki
posted2025/07/23 11:01
NHKを52歳で退局した豊原謙二郎アナウンサーは、1人会社の社長として未来を歩もうとしている
「NHKにいたときは『じゃあこの試合を実況してください』と言われたら準備の時間を何日かもらえます。でも今は会社の経営をやりつつなので、そんな時間はない。実況するための準備の時間の差は、サラリーマン時代とは圧倒的に違いますね。ただ、経営者としては“ど素人社長”なので、そこに僕の強みはない。むしろある種、実況アナウンサーという“プレイヤー”でもあることが僕の強みは思ってるんで、そこを完全に消してはいけない。実況はやり続けないといけないのかな、と」
YouTube…5分おきに再生回数を(笑)。
――会社設立と現在のお仕事について伺ってきましたが、最後に……「52歳」という年齢でのステージチェンジに不安はなかったんですか。
「不安しかないですよ。ほんと不安です。大きな舞台で、少なくとも人の心を動かす放送ができて、これからやろうとしていることも間違ってないと思っています。ただ、ビジネスとして成功するとか、お金稼げるのか、とか、そういうとこは不安しかないですよ。先ほど話に出たYouTubeで言えば、5分おきに再生回数を確認するぐらいですから(笑)」
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――では、なぜこのタイミングだったのでしょうか。
「55歳、役職定年まで頑張ればいいじゃんと言っていただいたこともあるんです。でも、今からあと3年後に、エナジーが体の中に残っている保証はあるのか。若い時の1年とは違う。この1年1年でどんどん失われていく。だから本当に新しい挑戦をするんだったら、1年でも早い方がいい、と。それに我慢すること自体がエネルギーの無駄遣いですから」
「53歳」という節目…師匠のアナ、平尾誠二さんが
――52歳というのはベストなタイミングだった、と。
「あと、僕の中では「53歳」が大きな節目の年であったことも背中を押しました」
――というと?
「自分の師匠にあたる先輩の石川洋さん(2004年アテネ五輪で北島康介をインタビュー)が53歳の時に亡くなられたのですが、ラグビーで大変お世話になった平尾誠二さんも同じ53歳で亡くなりました。人間、自分が思ってるほど人生は長くないかもしれないということは、2名の先輩から教わりましたから。後悔しないように、自分の道を歩んでいきたいと思います」
◇ ◇ ◇
スポーツ選手にインタビューしたい――と、メディアの世界に飛び込んだ豊原アナ。潔く後進に道を譲り、実況者として築いた確固たる実績を糧に、新しいスポーツの発信に全力を注いでいく。〈全2回/前編から続く〉

