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「なぜルーキー岡田彰布を使わないんだ」球団社長が介入…“阪神タイガース暗黒時代”原点は名外国人監督への「カミソリ入り手紙」事件だった
text by

江本孟紀Takenori Emoto
photograph bySports Graphic Number
posted2025/07/21 06:00
岡田彰布のルーキー時代の起用法をめぐって、当時の阪神監督と球団社長が紛糾する事態があった
シーズンに入ると「岡田を使え」の声が日増しに大きくなっていったのと同時に、ブレイザーの自宅にカミソリ入りの手紙が届くなど、悪質ないやがらせもされるようになった。しまいには小津球団社長までもが、「なぜ、岡田を使わないんだ」とメディアの前で露骨に発言するようになり、ブレイザーは四面楚歌の状態となっていく。
チーム内はもはやバラバラになっていた。
オカダは、たしかにいい選手だ。でも…
ちょうどこのころ、岡山で試合が終わったあと、私がホテルの部屋にいると、ブレイザーに「バーにいるから来い」と呼ばれた。南海時代から知っていた私たちは同じ席に座り、ブレイザーの話に耳を傾けた。
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すると、彼は冷静にこんなことを話し始めた。
「岡田は、たしかにいい選手だ。でも、僕は岡田のことを嫌いでもなければ、恨みだってあるわけがない。まだ試合で結果を出すのは無理だと思っているから起用しないだけなんだよ。いま無理して起用して、それで取り返しのつかない失敗をしてしまったら、誰が責任を取るんだ。岡田本人だって永遠に浮上してこないことだって考えられる。そんな無謀な賭けのような起用法は絶対にしたくないんだ」
たしかに、ブレイザーが言っていたことは本当だろう。岡田と何か軋轢があったわけではないし、そもそもブレイザーと岡田がトラブルとなるような事態に陥ったことなど、それまでにも一度もなかった。私はブレイザーの言葉を信じて、「これからもこの人を男にするために戦っていこう」と決意を新たにした。
球団社長とブレイザーが直談判することに
だが、その3日後、事態は大きく動いた。
岡田を起用しないことにしびれを切らした小津正次郎球団社長がブレイザーと話し合いの場を持ったのである。〈つづく〉

