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36年ぶり「大学1年生がアマ横綱」の衝撃…大の里も撃破した“天才力士”は、なぜ相撲界から姿を消した?「整備された“道”が見えてしまった」
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別府響Hibiki Beppu
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/14 11:01
2020年の12月、大学1年生としては36年ぶりとなるアマチュア横綱に輝いた花田秀虎。一方で、その栄光は花田の心中に微妙な変化をもたらすことになる
期せずして相撲界期待のホープからの転向相談を受けた安田氏は、喜んで協力を申し出てくれたという。その協力を得られたことで、結果的に話はとんとん拍子で進んでいくことになる。
2022年3月には、アメフトの社会人リーグの合同トライアウトに参加。競技未経験にもかかわらず、身体測定では規格外の身体能力を見せる。
その後は相撲を軸にしながらアメフトには週1~2回取り組む“二刀流”を続けたが、どうせやるなら本気でやろうと肚を決めた。
2022年7月…土俵から離れることを決断
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花田はその年、7月に開催されたワールドゲームズの日本代表に選ばれていたこともあり、それを良い区切りと相撲から離れることにした。ちなみにワールドゲームズ重量級の決勝戦では、前編で触れたようにのちの横綱・大の里になる同じ日体大の1年先輩でもある中村泰輝を破って世界一に輝いている。それだけに、その後の突然のアメフト転向は、相撲界の面々にとっては衝撃的なニュースだっただろう。
翌2023年1月にはアメリカ・アイビーリーグ選抜と対戦する国際親善試合の日本選抜メンバーに選出されると、3月にはカナダで開催されたカナディアン・フットボールのコンバインに参加。
すると、そこでのプレーを見たアメリカの大学から編入のオファーが舞い込んだ。
「現地で何校かのコーチと面談して、自分が成長できる環境があって、あとは試合に出られる可能性も考えて、NCAA1部のコロラド州立大を選びました」
NCAA1部ということは、アメリカの大学スポーツではトップクラスのチームである。つまり、そこで活躍すれば十二分にNFLのドラフトにかかる可能性もあるということだ。
そして7月。「日本人初のNFL選手」を目指し、花田はコロラド州立大学編入のため渡米した。アメフト転向を考え始めてから、わずか2年半という“スピード出世”で、アメリカの大学最高峰の舞台までたどり着いてしまったわけだ。
「ただ、正直アメリカに行った直後はめちゃくちゃきつかったですね。すごくいい経験にはなりましたけど……戻れと言われても絶対に戻りたくないです」
日本のアマチュア横綱が、珍しく吐いた弱音。異国の地で一体何が起こったのだろうか?
<次回へつづく>


