36年ぶり「大学1年生がアマ横綱」の衝撃…大の里も撃破した“天才力士”は、なぜ相撲界から姿を消した？「整備された“道”が見えてしまった」 

「高校で部活をした後に、週何回かは県庁の稽古にも混ざらせてもらって。そうやって強くなれる環境が和歌山にあったから、中学卒業してすぐ入門とかは考えなかったですね。外に出ていかなくても和歌山で十分、まだ強くなれると思ったので」

　そして、その選択は功を奏する。高校でもその実力はメキメキと伸びていった。

　1年目の2017年インターハイで早速5位に入賞すると、翌春の全国高校選抜大会の個人戦で1年生ながら全国制覇。2018年と2019年には日本の枠を飛び越えて、世界ジュニア選手権の無差別級で連覇も達成し、名実ともに高校トップ力士となった。

和歌山商高時代は1年目から選抜大会で全国制覇を達成するなど活躍　©KYODO

ADVERTISEMENT

　それだけの実績を残したこともあり、当時は当人も「できるだけ早く大相撲に入って、横綱を目指したい」と考えていた。

多くの部屋から勧誘も…選んだのは「大学進学」

　当然、卒業時には多くの相撲部屋から勧誘を受けた。ただ、花田の心を最も動かしたのは、本人も意外なことにある大学の相撲部だった。

「プロは声がかかった部屋はほとんど全部見に行きました。そのうえで、『一応、大学も見ておこうかな』と思っていくつか行った中に日体大があったんですよね。そこで斎藤（一雄）監督の指導を見て……即決でしたね」

　監督と話す中で、直感的に「あ、ここが一番、強くなれるところだ」と思ったという。

「なんというか、僕の中でそれまでの相撲の概念を覆された感じがしたんですよね。教え方とか、かけてくれる言葉とか」

　そうはいっても未だ体育会系の極みのような相撲界である。

　令和の世になったとはいえ、そう簡単に業界そのものの雰囲気が変わるわけではない。そんな中にあって、花田は日体大相撲部の雰囲気に“異質さ”を感じたという。

「監督がすごい理論派というか、柔軟で、クレバーで……しかも言葉があるタイプで。結構、哲学的な話とかもしてくれたんです。僕もどちらかといえばデータ重視というか、論理を大事にしてやってきていた。そういう目で見たときに光って見えたというか、他とはちょっと違う印象を受けたんです」

日体大相撲部の斎藤一雄監督　©JIJI PRESS

　ちなみにこの斎藤監督の柔軟性は、のちに花田の人生に大きな影響を与えることになる。

　果たして2020年の春、花田は日体大に入学する。そしてそこで、予感通りというべきなのか、1年目から覚醒と言っていいほどの活躍を見せる。

【次ページ】　「見えてしまった」自分の未来図