36年ぶり「大学1年生がアマ横綱」の衝撃…大の里も撃破した“天才力士”は、なぜ相撲界から姿を消した？「整備された“道”が見えてしまった」 

「いま、俺がアメフトやったらどうなるのかな――？」

　選手権優勝から日が経つにつれ、そんな突拍子のないことを考えるようになっていった。

　ただ、ここまではまだよくある話でもある。

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　若くして頂点を極めたアスリートにありがちな、ある種の燃え尽き症候群。一方で、大抵はここで周囲の叱咤や激励を受け、もしくは自分で原点を見つめ直して、再びモチベーションを見つけてもとの道に帰ってくるケースがほとんどだ。

　だが、幸か不幸か花田にとって、この思い付きは加速度的に現実味を帯びていってしまう。

重なった偶然…まさかの競技転向が現実的に

「モチベーションが上がらないんです。他の競技もやってみようかと思っていて」

　選手権後、そう斎藤監督に相談をした。

　普通なら怒られるか、窘められるだろう。花田自身もそう言われることを想像していた。ところが、博士号まで持つ学者肌の斎藤監督の口からは、予想外の返事が返ってきた。

「そうか、お前の気持ちはわかるよ。じゃあ、やってみたら？」

「監督にそうやって肯定的に言ってもらえたのが一番の救いで。本当にこの先生のところを選んでよかったなと思いました」

©Shigeki Yamamoto

　一方で、監督の許しこそ得たものの、突然縁もゆかりもないアメフトに挑戦しようにも、なかなか具体的な方法が思いつかないのも事実だった。だが、そんな花田にもうひとつの偶然が重なる。

　当時、花田は相撲に向けたフィジカル強化のために、自らパーソナルトレーニングのジムに通っていた。

「僕がトレーニングしている時間帯に、いつも1人でトレーニングしている中年男性がいて。それで『君、でかいね！』『相撲やっていて』みたいに雑談していたんです。それで、ちょうど進路に悩んでいた時に『ちょっと今、相撲からアメフトに変えようと思っていて……』みたいな話もしたんですよね」

　花田にとって幸運だったのは、その「トレーニングをしている中年男性」が、当時スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店を務めていたドーム社のCEO（当時）である安田秀一氏だったことだ。安田氏は過去、法大アメフト部の総監督を務めた経験もあり、そちらの分野にも造詣が深かった。

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