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横綱・大の里「実は後輩に敗れていた」世界大会…怪物を撃破も“相撲界から消えた”同じ大学の天才力士とは何者だった?「弱冠19歳でアマ横綱に…」
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別府響Hibiki Beppu
photograph byKYODO
posted2025/07/14 11:00
2022年のワールドゲームスで優勝した日体大3年時の花田秀虎(中央)。決勝で破った1学年上の先輩・中村泰輝(左)はのちの横綱大の里だ
ちなみにこの大会の優勝以降、大の里のアマチュア相撲界での快進撃は続いた。翌年の全日本選手権も連覇するなど、最終的には「アマ13冠」というとてつもない実績を引っ提げて角界入りすることになる。
そして、そんな2人が雌雄を決したのが、2022年の夏にアメリカ・バーミンガムで行われたワールドゲームズだ。
ワールドゲームズは、オリンピックに採用されていない競技種目で、世界トップ級のアスリートが競い合う国際的な競技大会だ。この大会には相撲も競技として採用されており、この年の重量級には、日本代表として3年生の花田と4年生の大の里がともにエントリーしていた。
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フィジカル面に勝る海外勢を相手にしながらも、2人は危なげなく勝ち進んでいった。そして決勝戦――トーナメント表に最後に残った名前は、花田秀虎と中村泰輝の2人のアマチュア横綱だった。
新旧アマ横綱同士の直接対決…結果は?
そうして迎えた勝負の一番。
大の里は立ち合いで小さく変化を見せる。花田は、その懐に一瞬で飛び込んだ。
そのまま焦る相手の体を起こすと、一気に土俵際へと押し込む。最後は足を取って、そのまま土俵の外へと押し切る電光石火の勝利だった。尊敬し、最も警戒する同門の先輩を世界の舞台で真正面から破ってみせた。
「もう昔の話ですし、あれは本当に研究に研究を重ねてハマっただけ。今の泰輝先輩と比べるのはおこがましすぎますよ」
そう本人は謙遜するが、当時はアマチュアでは無双状態だった先輩を破っての世界一である。その価値は、相撲界から見ても非常に大きなものだった。
おそらくは角界へと進むであろう大器の先輩に続いて、きっと花田もその後を追うはずだ。間違いなくまた2人で切磋琢磨し、未来の相撲界を盛り上げてくれるに違いない――。
きっと、周囲はそんなことを考えていたはずだ。
だが、そんな周りのステレオタイプな予想はあっさり覆されることになる。その理由は、このワールドゲームズを最後に突然、花田が土俵から姿を消したからだった。
<次回へつづく>


