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「これ以上言ったら退場ですよ」「わかってます」巨人・阿部慎之助監督の退場劇は“確信犯”だったのか? リプレー検証に“あえて抗議”した理由とは 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph bySNAKEI SHIMBUN

posted2025/07/07 17:00

「これ以上言ったら退場ですよ」「わかってます」巨人・阿部慎之助監督の退場劇は“確信犯”だったのか? リプレー検証に“あえて抗議”した理由とは<Number Web> photograph by SNAKEI SHIMBUN

7月2日の阪神戦8回のクロスプレーを巡るリプレー検証に抗議し、退場処分となった巨人・阿部慎之助監督

「チャレンジ制度」と呼称されるMLBの場合は、ニューヨークのMLB本部内にリプレーセンターを設置。その日の試合担当ではない審判員が2クルー8人のシフト制で、全米のチャレンジに対応する。

 もちろん日本の場合も当該の審判員が客観的な検証を行なっていることを疑うものではない。ただ疑念を省くという視点で言えば、当該審判員によって判断をするとなると、例えば球場の雰囲気という目に見えない圧力(特に甲子園球場のようにファンの声援が激しい球場等では)が影響しないか。あるいは最初に判定を下した審判員と他の審判員との力関係(最終的な多数決には参加しないが、最初に判定を下した審判員はビデオ検証する場所には同席する)が判定を左右しないか……等々と余計な勘繰りを生みかねない環境があるのは確かだ。

 最終判定からそうした余計な要素を排除し、客観性と公平性を担保する。そのためにはテレビ画像ではなく、映像収集のシステムをしっかり確立すること。またMLB、KBO同様に、球場ではない別の場所で、試合に関係のない第三者によって判定をするシステムの確立は不可欠である。

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 その上で独自の映像があれば、最終的に判断を下す材料となった映像をサイト上にアップして判定の基準を示すことなど説明基準の明確化も可能となるだろう。

 そういうシステムが確立されれば、リプレー検証の信頼性も大幅にアップし、今回のように阿部監督がリプレー検証の結果に“抗議”すること自体が無意味となるはずである。

「ルール違反」だが、責めることもできない

 巨人は阿部監督の退場劇も空回りした形で、7月3日の第3戦も落とし、ゲーム差は6.5まで広がった。

 51年前、川上監督が退場になった時も、チームが4連敗中で、おそらく川上監督も阿部監督同様に自らの退場という処分を糧に、チームに風を起こそうとしたのかもしれない。ただ、その甲斐もなくチームは最終的には中日に敗れ、リーグ優勝と日本一はV9でストップするという結末を迎えた。

 川上監督も異例の退場という処分を覚悟の上で、それでも御法度の抗議へと踏み出したわけである。やることをやり尽くした上で、なおさらに風を起こすために、何かをしなければならない。

 それは監督のある種の性なのだ。

 今回の阿部監督の異例の退場劇もそうだった。「ルール違反」ではある。ただ監督の行動として、決して責めることもできない。

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