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阪神で24人戦力外「もうしんどいよ」クビ通告された選手の反応は? 阪神元編成部長が明かす“戦力外が決まるまで”…死去直前の星野仙一が言ったこと
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岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/08 11:01
金本知憲の獲得に沸いた2002年オフ。同時に阪神では、24人の選手がリストラを言い渡されていた
「1回目は候補の数が多い。2回目から徐々に絞っていきますね。もちろん一軍監督の星野さん、二軍監督の岡田(彰布)の意見も聞きました。30代半ばの選手が何人もいた。星野さんは、そこに目を付けたんでしょうね。9月の終わり頃から通達しました」
24人を解雇…球団常務「しんどいよ」
シーズン中の9月26日、一軍の遠征先である横浜市内のホテルで、竹田邦夫球団常務が遠山奨志(35歳)、伊藤敦規(39歳)、弓長起浩(35歳)、成本年秀(34歳)、西川慎一(35歳)、川俣ヒロアキ(30歳)の6投手の戦力外を発表した。彼らが通告されたのは、その前日、大阪のホテルでのことだった。
「最初に新聞に漏れると、『なんで先に言ってくれないんですか』と揉める原因になります。だから、早めの通告がいいという事情もある。それに、地下に駐車場のあるホテルなら、マスコミにもバレにくいでしょう。球団事務所で通告すると、マスコミに勘付かれ、コメントを求められた選手が感情的になるかもしれない。そうなると、本人にも球団にも良くない。功労者ですから」
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通告日、部屋の外に数人が並んでいた。緊張した面持ちの選手が入室するたびに、竹田常務が「来年は契約いたしません」と一言述べ、黒田編成部長が解雇の理由、今後の身の振り方について話した。それを6回繰り返した。
「竹田さんは『もう、しんどいよ……』って溜息ついてましたわ。同じことを何度も言うから、辛いんでしょう。それに、サラリーマンって余程のことがない限り、クビにならないですからね。頭でわかっていても、気持ちが追いつかないんでしょうね」
通告された選手の反応
その後も、同年に二軍で防御率と勝率のタイトルを獲得した横田久則(35歳)、95年ドラフト1位の舩木聖士(29歳)など8人に解雇を通告した。度重なるクビ宣告に、黒田は心労を抱えなかったのだろうか。
「別に、何も感じませんよ。プロ野球はそういう世界ですし、仕事として割り切っていました。話す内容も違いますからね。70人枠があるので、戦力外にしないとドラフトで新人を取れませんしね」
解雇を言い渡した時、声を荒らげる選手はいなかったのか。
「そんなこと言わさへんよ」
黒田はハッキリと述べた。

