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「木佐貫くん、トレードです」巨人の新人王右腕がなぜ? 電撃移籍の舞台裏…オリックス→日本ハムでは大谷翔平と“同期”に「今は僕が助けられて…」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKYODO
posted2025/07/01 11:04
オリックスへのトレードが決まり、当時の清武球団代表とともに会見する巨人・木佐貫
オープン戦から結果を残し、先発ローテーション入り。3月28日のソフトバンク戦に先発し、8回途中1失点で実に609日ぶりに勝利投手となった。6月には5連勝を飾るなど完全復活。ダルビッシュ有(当時日本ハム)や田中将大(同楽天)ら若い剛球投手が揃っていた当時のパ・リーグの中で、30歳の右腕の燻し銀の存在感は際立った。
「使わんのやったら…」岡田監督が明かした秘話
「凄い先発ピッチャーが揃っていましたから、対する打者の打力もめちゃくちゃ高いと感じながら投げていました。当時のパ・リーグのバッターは早いカウントから振ってきて、豪快な空振りもするけど当たるととんでもなく飛んでいく。でもその分、自分も思い切り投げられましたし、セ・リーグの打者なら見極めてくるフォークボールも思い切りよく振ってもらえるという良さはありました」
3シーズンぶりに二桁勝利を挙げ、翌2011年には開幕投手の大役を任せられた。オリックスでの3年間で71試合に登板。投手としてもう一度働ける場を与えてくれた岡田彰布監督には感謝が尽きないと話す。
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「移籍2年目くらいに雑談をしている時、『俺が原(辰徳監督)に直接、木佐貫を使わんのやったらちょうだい、って言ったんよ』という裏話を聞きました。オリックス監督就任前にその二人の間で私の話題を出してくださったみたいで。開幕戦を任せていただいてくれたことも意気に感じていました。対戦チームとの相性を考えて先発ローテを組んでくれたり、色々と気にかけていただきました」
荷物の伝票を書き換えて…突然のトレード
2度目の移籍は、突然だった。2013年1月23日、日本ハムの糸井嘉男・八木智哉に対し、赤田将吾・大引啓次とともに「2対3」の大型トレードが発表された。その知らせを受けたのは、宮古島キャンプへ荷物出しする直前だった。
「キャンプの荷物の段ボールを車に積んで普通に私服で球場に行ったんです。会議室のドアを開けた瞬間、スーツを着た偉い人が3人くらい目に飛び込んできて『木佐貫くん、トレードです』と。まさに青天の霹靂でした。チーム便で送る予定だった荷物の伝票をその場で書き換えて、日本ハムのキャンプ地に自分で送ったことを覚えています。トレードって本当に事務的に進んでいくんだなあ、と思いながら」
木佐貫さんが3つ目の球団のユニフォームに袖を通したこの年、新入団選手としてドラフト1位で日本ハムに入団してきたのが大谷翔平だった。2月のキャンプで初めて顔を合わせた時のことは印象的だったという。



