ぶら野球BACK NUMBER

「お前はもう戦力に入っていない」実家で父親・長嶋茂雄から告げられた戦力外通告…“2世”長嶋一茂のプロ野球人生はこうして終わった 

text by

中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

PROFILE

photograph byKYODO

posted2025/06/05 11:06

「お前はもう戦力に入っていない」実家で父親・長嶋茂雄から告げられた戦力外通告…“2世”長嶋一茂のプロ野球人生はこうして終わった<Number Web> photograph by KYODO

1993年、巨人にトレード移籍した長嶋一茂。同年4月10日、打席に向かう一茂(右)と長嶋茂雄監督

 肘痛を抱えながら、ベンチプレス170キロ、ベンチスクワット300キロを優に挙げ、背筋力は300キロ以上あった。なのに、心がついてこない――。

「残念だけれど、お前はもう来季の戦力に入ってない」

 1996年秋、田園調布の実家で、父は自らの口から息子に戦力外を通告した。「わかりました」とだけ答える一茂。夢の終わりは呆気ないものだった。少年時代、父親のところに送られてくる大リーグの16ミリフィルムに衝撃を受け、瞬く間に強肩強打の捕手ジョニー・ベンチのファンになった。すると父・茂雄が子供用のミットからプロテクター、マスクやレガースまで用具一式を買ってくれたという。あまりの嬉しさにそれを全部体につけたまま寝た一茂。夜遅くに帰ってきたミスターは、眠る息子を起こさないよう、笑いながらそれを全部外してやったのだという。

ADVERTISEMENT

 一茂だけじゃない。茂雄の夢もここで終わったのだ。プロ9年間でわずか通算18本塁打。それでもファンや関係者、多くの人間が未完の大器・長嶋一茂に夢を見た。夢の中で始まり、夢で終わったプロ野球人生が確かにそこにあった。

<《前編》から続く>

関連記事

BACK 1 2 3
#長嶋一茂
#長嶋茂雄
#読売ジャイアンツ
#野村克也
#松井秀喜
#東京ヤクルトスワローズ

プロ野球の前後の記事

ページトップ