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長嶋茂雄が猛批判された日「清原に送りバントはねえだろう」巨人オーナー・渡辺恒雄は疑問も…清原和博は長嶋から“1本の電話”「この人には敵わない」
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岡野誠Makoto Okano
photograph byKYODO
posted2025/06/06 06:02
1996年11月24日、巨人に移籍した清原和博と握手する当時監督・長嶋茂雄
〈サインが出たからやったんや。最後はいい場面だから打ちたかった〉(2001年7月18日付/スポーツ報知)
新人の時以来、15年ぶりとなる犠牲バントの質問には素っ気なく対応し、9回の三振を悔やんだ。
各スポーツ紙の評論家は長嶋采配に疑問を呈した。監督として日本一に導いた元指揮官たちはこう書いた。
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元阪神監督・吉田義男〈今年の清原は、巨人の扇のかなめの存在。打撃も好調だし、あそこでバントはベンチとの信頼関係が壊れるだけです〉(2001年7月18日付/日刊スポーツ)
元横浜監督・権藤博〈相手が怖がっているのは一体何なのか。巨人ベンチにはもう一度考えてもらいたい。(中略)次の高橋由にかかる重圧の大きさ、これはすさまじいものがある〉(2001年7月18日付/スポーツ報知)
清原へのバント指令は大きな波紋を呼んでいた。渡辺恒雄オーナーも疑問を呈した。
〈分からんなあ。打たせるべきだと思うが、監督がいいと思ったんだろうな。でも、清原に送りバントさせることはねえだろう〉(2001年7月19日付/スポーツニッポン)
〈清原にバントさせることはないだろう。オレは打たせるべきだと思うが、仕方ないな。(さい配は)長嶋監督がいいと思ったことだろうしな〉(2001年7月19日付/スポーツ報知)
「清原、ナイスバントだよ」
翌朝、長嶋監督はホテルの部屋に電話を掛け、「清原、ナイスバント。ナイスバントだよ」と褒めたという。清原の気持ちは落ち着いた。
〈あんときな、むしゃくしゃしていたことなんてどうでもよくなって笑えてきた。ああ、この人にはどうあっても敵わないんだと思ったわ〉(2022年7月発行/書籍『虚空の人 清原和博を巡る旅』鈴木忠平・著/文藝春秋)

