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「葛藤はあったと思うんです。でも…」高校駅伝で話題の“集団転校”…思い出す“2012年の豊川高校”の衝撃 転校組を「受け入れられた」納得のワケ
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和田悟志Satoshi Wada
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/19 06:01
2012年都大路で初出場初優勝を達成した愛知・豊川高の胴上げシーン。留学生を除くとアンカー以外は全員、宮城・仙台育英高からの転校組だった
「秋ぐらいからは、このチームは『本当に強い』というのを実感していました。この人たちとなら『全国優勝ができるだろうな』と思うようになっていました。もちろん豊川工業も強い選手がいたので、全く油断はしていなかったんですけど、『アクシデントがなければ勝てるんじゃないか』と。その分『自分が失敗してはいけない』というプレッシャーもありましたけど……」(皆浦さん)
転校生たちが出場できなかったその夏の全国インターハイは、カレミ・ズクが豊川工業高の平らを抑えて5000mで優勝を飾っていた。
ズクに加え、服部、一色、土屋といった全国レベルの選手がタスキをつなぐのだ。皆浦さんが自信を深めたのも必然のことだった。
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9月の「都大路の前哨戦」日本海駅伝では、1区の服部、3区の一色、4区のズクがそろって区間賞を獲得し、兵庫の西脇工業高、広島の世羅高、福岡の大牟田高、同じ愛知のライバル・豊川工業高といった全国の強豪校を抑えて圧勝した。全国制覇という目標が一気に現実味を帯びてきた。
迎えた県予選…圧勝で都大路「初出場」が決定
そして迎えた10月の愛知県高校駅伝。14連覇中だった豊川工業高の牙城を崩し、2分以上の大差を付ける圧勝劇で、ついに豊川高は初の全国の切符を掴んだ。
ちなみに豊川工業高も、連覇こそ途切れたものの、従来の大会記録を上回る好タイムだった。それほど豊川高の布陣が強力だったということだ。
「先輩たちは速かったですね。工業もやっぱり強かったですが、さすがに周りからは『勝って当たり前』と思われていたと思うので、順当に全国に行けて、ほっとしました」
皆浦さんは2区を任され、区間賞を1秒差で逃したものの、先頭を守り抜いて3区のズクにつないだ。
「女子は全区間で区間賞を獲って、男子も自分以外はみんな区間賞だったんです。自分だけが区間2位で、ちょっと『やらかした……』という苦い思いもありました。それで誰かに責められることはなかったんですけど、弾馬さんには『お前ならもっといけるはずだ』みたいな言葉をかけられたのを覚えています」
皆浦さんはこう振り返るが、自身の役割はきっちりと果たしたと言えるだろう。
そして、豊川高の快進撃は12月の都大路でも止まらなかった。
<次回へつづく>


