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「葛藤はあったと思うんです。でも…」高校駅伝で話題の“集団転校”…思い出す“2012年の豊川高校”の衝撃 転校組を「受け入れられた」納得のワケ
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/19 06:01
2012年都大路で初出場初優勝を達成した愛知・豊川高の胴上げシーン。留学生を除くとアンカー以外は全員、宮城・仙台育英高からの転校組だった
同じ寮で生活しながらも、最初は転校組とは別々に練習をしていたという。元々いた部員は従来通り、男子の指導者だった北野孝英監督が指導にあたり、転校組は女子の森安彦監督が練習を見ることになっていた。
「食事も転校生組はみんな一緒に食べていたんですけど、自分は別で食べていました。時間帯がかぶったときに一緒に食べたことがあったのですが、そういう状況だったので、むしろ自分のほうがアウェー感が強かったかもしれないです。でも、みんな気さくだったので、自分のほうが受け入れてもらった感じでした(笑)」(皆浦さん)
転校組のフランクな態度…少しずつ打ち解けた
そんな風に寮では立場が逆転していたが、仙台育英高からの転校生たちがフランクに接してくれたこともあって、少しずつ打ち解けていった。また、皆浦さんも彼らに対して「ぎこちなくならないように」接していたという。
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そのうちに「きっかけは覚えていないんですが、なんとなく」朝練習を一緒にやるようになり、次第に通いの生徒たちも練習を共にするようになっていった。
「僕自身はシンプルに『強い選手に付いていけば強くなれる』と思っていました。3年生の先輩たちは最終学年でしたから、どう思っていたかは分からないんですけど、少なくとも自分が見た限りでは、そんなにギスギスしている感じはしなかったです」
こうして服部弾馬(東洋大→現NTT西日本)、一色恭志(青学大→現NTT西日本)といった全国区で活躍する選手たちが新たなチームメイトになった。
そして新年度を迎えると部の体制も変わった。森監督が男子の指導にも就くことになったのだ。
「森監督は女子で全国優勝を経験しているので、そういう意識づけがすごかったです。弾馬さんたちも強かったので、みんな『(全国で)勝負できる』『勝てる』という意識でした。自分は半信半疑でしたが、『やることをやれば勝てるんだ』とも思えてきて。とにかく弾馬さんたちに付いていくだけでした」

