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メッシもネイマールもエムバペも放出で“超高額スター不在”PSGがCL制覇を狙える「完璧なチーム」に覚醒のナゼ…“黄金期バルサ”との共通点
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井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAurelien Meunier - PSG/Getty Images
posted2025/04/29 17:04
CLベスト4に進んだPSG。メッシもネイマールもエムバペもいなくなったチームが今「完璧なチーム」になれた理由とは?
「(PSGは)統率の取れた完璧なチームだ。インテンシティー、一体感、中盤のローテーション……、実にうまく組織されている。うちが良くなかったと言う人もいるが、私はそうは思わない。とにかく相手が強かった。あれほどまでに、クオリティーとインテンシティーを高度に兼ね備えたチームとは、初めて対戦したと思う。
(中略)PSGはここ2、3カ月で大きく改善された。グループフェーズで彼らが負けたアーセナル戦とバイエルン戦は敵地で行われ、引いて守って逆襲を狙っていたが、うちとの初戦は最初から激しくハイプレスをかけ、リスクを負ってマンツーマンのアグレッシブな守備をずっとしてきた」
現代のトップ中のトップレベルでは、苛烈なハイプレスとリズミカルなポゼッションが主流になっていて、双方を極上のレベルで体現しているのが今のPSGだ。そんな見事なチームを作り上げたのはルイス・エンリケ監督──フットボールの報道でもっとも権威あるメディアのひとつ、『レキップ』紙が「今のPSGのスター」と評する指揮官である。
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今から10年前、このスペイン人監督は就任1年目のバルセロナで3冠を達成。その2015年の暮れには、日本で開催されたクラブW杯で優勝している。筆者は横浜で行われた2試合を取材して執筆したので、個人的にも当時の彼のチームはよく覚えている(https://number.bunshun.jp/articles/-/824779)。
バルサ黄金期と今のPSGの共通点とは
当時のバルセロナと今のPSGには、共通点がある。システムは4-1-2-3で、中盤にはテンポを司る小柄なテクニシャンがいる。自身4度目のCL制覇後、カタールに移籍していたため、シャビはクラブW杯には来なかったが、彼とアンドレス・イニエスタはバルセロナ黄金期の中盤の象徴的な存在だった。現在のPSGには、その二人に似通う20歳のジョアオ・ネヴェスと25歳のヴィティーニャがいる。2人とも国籍はポルトガルだが、背格好とプレースタイルは、スペイン人の先達ふたりに通じるものがある。
タイミングよくボールを受け、素早く正確に手放し、リズムを生み出す。前方にスペースがあれば、自ら持ち上がり、難しいプレーを簡単に繰り出すように。
もっとも、闘争心旺盛なアンカー、ヴィティーニャにはジェンナーロ・ガットゥーゾ的な要素も濃い。ひげを蓄え、どこまでも相手を追い回し、瞬殺のタックルでボールを奪ったり、激しい形相で相手に体ごとぶつかったりもする。3ピースのもうひとり、29歳のスペイン代表MFファビアン・ルイスは、背丈はセルヒオ・ブスケツと同じ198センチで、所作はシャビの後任イヴァン・ラキティッチに近いか。
22歳バルコラ、19歳ドゥエのフランス産俊英とともに
PSGの3トップは、メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスを揃えた当時のバルセロナほど煌びやかではないが、若さと勢いで優る。

