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カープ末包昇大はいつ「4番」と認められるのか? 「強い選手ではなかった」昨年9月に実感した技術不足からの脱却 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2025/04/28 06:02

カープ末包昇大はいつ「4番」と認められるのか? 「強い選手ではなかった」昨年9月に実感した技術不足からの脱却<Number Web> photograph by JIJI PRESS

4月9日から4番打者として活躍を続けている末包

「1年間通してやれる選手はケガにも強く、たとえ崩されても這い上がれる。9月に落ちて、崩れたまま終わったのは、強い選手ではなかったということ」

 自分の中にある迷いや不安を隠すだけの心技体が備わってなかった。何より、立ち返る「型」のない技術不足を痛感させられた。打撃をいちからつくり上げる──。そう覚悟した。

 昨年12月は西武中村剛也や巨人岡本和真との合同自主トレに参加。1月は3年連続でカブスの鈴木誠也の下で振り込んだ。前年に志願して参加した護摩行は辞退した。技術を高め、心を強くする道を選んだ。下半身から両腕、肩や腰のライン、胸郭に至るまで各部分の動きを確認しながら、研磨の日々を過ごした。

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 新打法の礎は固まった。あごひげを蓄えたままキャンプインしたのには、充実した1月の験を担ぐ意味もあった。だが、自分との戦いから他者との戦いとなる2月下旬から3月のオープン戦では苦しんだ。

「バッティングフォームが固まっても、実戦ではタイミングが合っていなかった。タイミングが合わないから球の見極めができず、動き出したらもう振るしかない。自分の間合いで打てていなかった」

 固めた打法を実戦仕様に調整する必要があった。試行錯誤する中で、大きく上げていた左足をすり足のように小さく引くように修正。間合いが取れるようになっただけでなく、目線がぶれなくなったことで球の見極めもできるようになった。

真価を問われるのは5月以降

 それでもオープン戦はアピール不足に終わり、外野のポジション争いでは二俣翔一の後塵を拝した。最後列ながら開幕を一軍で迎え、主力に故障者が出たチームの危機的状況をチャンスに変えた。4月9日の中日戦からは4番を任され、好調の3番小園海斗とともに大きな得点源となっている。フルカウントを除く2ストライクに追い込まれてからの打率は昨季.155と極端に低かったが、今季は.333と高い。追い込まれてからの強さは打撃にも表れている。

「4月に一軍で試合できているのは、ルーキーだった22年以来。でもあのときはなぜ打てているのか、なぜ見逃せているのか曖昧だった。今年はそれを分析しながらプレーしている。一日一日の結果は関係ない。今は内容が良ければ、結果は二の次。そっちの意識が強い」

 奪い取った立場は、しかし安泰ではない。5月上旬には開幕4番のモンテロと、外野の一番手だった秋山の実戦復帰が見込まれる。開幕時の序列では末包よりも前にいた選手たちだ。さらに同時期には、次世代の中軸と期待されるドラフト1位のルーキー佐々木泰も実戦復帰する。

「内容ある打撃を積み重ねて行くしかない。結果が出なくなってきたときに内容も悪くなったら、何も変わっていないと思われる。ベストメンバーになったときでも『使ってみたい』と思われるように、数字と内容を残しておかないといけない」

 末包の戦いは続いていく。厳しくなる他球団のマークを打ち破り、チームメートにポジションを譲らない結果を示し続けていかなければいけない。そして自分自身にも打ち勝ち、序列を変えていくことで、“4番”と認められる日もきっと訪れる。

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