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カープ末包昇大はいつ「4番」と認められるのか? 「強い選手ではなかった」昨年9月に実感した技術不足からの脱却
posted2025/04/28 06:02

4月9日から4番打者として活躍を続けている末包
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前原淳Jun Maehara
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JIJI PRESS
末包昇大が1月から蓄えているあごひげが、さまになってきた。下馬評の低かった広島だったが、開幕20試合で12勝7敗1分の好スタートを切った。リーグトップの防御率を誇る投手陣を中心とした堅い守りに加え、ウイークポイントとみられていた打線が奮起。チーム打率、総得点はともにリーグ2位という成績だ。そんな打線の4番に定着しているのが、開幕3連戦で一度も出番のなかった末包だ。
開幕試合で4番を務めた新外国人のモンテロは、3戦目に左脇腹を痛めて離脱となった。そして同日、外野の一角を担った秋山翔吾も右足首を負傷して戦列を離れた。
2人の離脱によって末包がスタメン出場の機会を得た4月2日ヤクルト戦、6回の第3打席で山野太一の内角低めの変化球を拾い上げて左翼席に運んだ。出場に飢えていた鬱憤を晴らすと、その後も存在をアピールするように打ち続けた。
立ち返る「型」をつくる覚悟
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昨季は2年連続2桁本塁打とはならなかったものの、9本塁打を記録した。チームでは数少ない大砲タイプ。シーズン開幕前、外野のレギュラー有力候補に挙げる声は多かったが、末包の序列はそれほど高くなかった。新井貴浩監督がチームに求めた「変化」には世代交代も含まれるが、今年で29歳となる末包は若手ではない。かといって周囲を納得させるだけの経験や実績があるわけでもない。ポジションを与えられる立場ではなく、開幕一軍入りすら奪い取る立場にあった。4番を任される今も、新井監督からは「4番打者」と認められてはいない。
「昨年とは違うスエが出てきているなと思います。ただ(4番ではなく)4番目、です」
そんな評価にも、末包は表情ひとつ変えない。自分の現在地を見誤ってはいない。
「1年通して戦ったこともないので、まだ背負う立場じゃない。やっぱり年間通して出ないと信頼は得られないと思う。今は2列目くらいかもしれないけど、まずはそこから外れないように。もし先頭に何かあったら、その前に行けるようにと思っています」
序列の先頭に立つチャンスを逃した昨季の悔しさを胸に刻む。左ひざ痛で開幕に出遅れながら戦列復帰した5月以降、中軸を任された。だが、出場34試合目で6号2ランを放った直後、スライディングキャッチした際に左太もも裏を痛めた。再離脱を余儀なくされ、8月に再復帰してからもケガの影響から打撃を大きく崩した。チームが急失速した9月以降、長打は二塁打1本のみ。本塁打が1本も出ず、打率も1割台に沈んだ。チームの停滞感を打ち破るどころか、拍車をかける結果となった。