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「江夏の引退試合を甲子園でやらせてください」に阪神オーナーがNO…大投手・江夏豊が泣いた日「メジャー可能性75%→クビに…現役引退するまで」
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細田昌志Masashi Hosoda
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2025/02/14 11:06
1985年1月19日、多摩市営一本杉球場での「江夏豊たった一人の引退式」
12:30 江藤慎一(元中日)と瀧安治(元巨人)による少年野球指導。スペシャルゲストのビートたけしも飛び入りで登場
13:40 多摩ファイターズ対多摩市少年野球団が試合開始。2回表1死まで続行
14:10 多摩ファイターズ臨時監督のビートたけしが「ピッチャー江夏」を告げると、多摩市少年野球団臨時監督の武田鉄矢が「代打、落合博満」を告げる。少年野球チームに代わって、たけし軍団が守備に就いて江夏対ゲストの対戦が実現。落合博満(ロッテ)、高橋慶彦(広島)、福本豊(阪急)、山本浩二(広島)、大杉勝男(ヤクルト)、斎藤明夫(横浜大洋)、江藤慎一が登場。江夏と対戦。
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14:50 多摩市長、名球会、多摩市商店街会長、阪神応援団「狂虎会」会長、『Number』一原編集長より江夏に花束贈呈
15:00 大沢啓二と掛布雅之のメッセージが流れる
15:10 武田鉄矢「江夏に捧げる詩」朗読
15:15 ABC朝日放送・道上洋三アナウンサーによる「江夏名場面」実況
15:25 江夏豊 最後の挨拶→胴上げ→グラウンド一周
鳴りやまない拍手を背に、球場を回りながら、江夏は何度も何度も涙を拭った。その情景は、今季の不満、不興、不評のすべてを洗い流しているかのようである。
前代未聞の「手作り引退試合」の後は、ホテルニューオータニに移動し、午後6時から「江夏豊大リーグ壮行会」が盛大に催された。金田正一、稲尾和久、長嶋茂雄、王貞治、江藤慎一、張本勲、辻恭彦、山本浩二、鈴木啓示、有藤道世、村田兆治、福本豊、星野仙一と球界の大物が勢揃いし、山口洋子(作家・作詞家)と山藤章二による鏡割り、星由里子(女優)によるスピーチ、水島新司(漫画家)によるイラスト贈呈など、絢爛豪華な宴は午後8時半にようやくお開き。パーティの費用もすべて文藝春秋が負担している。
「メジャーの可能性75%」
その後、渡米した江夏豊は2月24日から始まるブリュワーズのキャンプに合流。背番号68を背負いテスト登板を繰り返すと、非凡さが認められ、3月8日の紅白戦に登板し1回無安打。13日にはジャイアンツ相手のオープン戦に登板し2回無安打。18日のマリナーズ戦では2回1安打無失点に抑え初勝利を収めている。これには日本のマスコミも「江夏メジャー確定」と報じ、23日のパドレス戦で2回3安打1失点に抑えると、ブリュワーズのジョージ・バンバーガー監督(当時)も「メジャーの可能性75%」と発言するなど、江夏の夢は実現したかに見えた。




