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甲子園鮮烈デビュー、あの巨人戦から10年…“阪神ドラフト1位”意外すぎる現在の姿とは?「26歳で戦力外通告」「引退後は安定した生活を捨て…」
posted2025/02/14 11:07

2014年ドラフトで阪神に1位指名され、新入団会見でポーズを決める横山雄哉(2014年12月)
text by

栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Sankei Shimbun
奈良県・橿原市、近鉄橿原線の石見駅から車で10分程度。のどかな田園地帯を抜けていくと、閑静な住宅街が姿を現す。
その一角に位置する株式会社SIRが、阪神タイガース“元ドラ1”の現在の職場である。
OEM製品などのアパレルを主軸に展開する同社に足を踏み入れると、倉庫には在庫のダンボールが並び、手作業で洋服作りに励むパートタイマーの女性達の姿もある。
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「営業から服作り、出荷や荷積みなどの雑務まで何でもやります! 何でも屋ですよ」
2014年秋のドラフト会議で阪神タイガースから1位指名を受けた横山雄哉は、自身が立ち上げたブランド『GAUCHER(ゴーシェ)』の洋服で全身を固め、こうおどけてみせた。
ルーキーイヤーの2015年、プロ初登板は本拠地・甲子園での巨人戦だった。7回1失点の好投は虎党達を熱狂させる。左腕から投げ込まれる150キロ前後のキレの良いストレートは、未来のエースの姿を想起させるに十分な印象を与えた。だが、左肩手術の影響もあり6年間でわずか9登板に終わっている。それでも、力強いストレートの軌道に抱いたロマンはファンの中では今でも語り草だ。
引退から4年。「真似が出来ないストレート」と称された男が左手に握るのは、硬球からデザインに使用するペンに変わっていた。
「(左肩は)痛いっす。今もそれは変わりませんね」
メスが入った左肩を回す素振りを見せると顔をしかめる。肩をしならせる動きをすると、仕事中であれ強烈な痛みに襲われることも珍しくない。現役時代から痛み止め注射を打ち続け、今なおそれは変わらなかった。球団職員としての安定した生活を捨て、アパレルブランドの立ち上げ、という風変わりな道を選択した元野球人の軌跡を聞いた。