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「フトンサービス7500円」「禁断マッサージ暴露本と種馬扱いのDF」ユーベ主力らが日韓W杯の裏で起こした“破廉恥スキャンダル”
posted2022/06/27 17:01
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
秘密の娼館「ビバ・レイン」があったのは、古都トリノのオラツィオ・アンティノーリ通り6番地だ。
日韓W杯の夏、一軒の売春宿がセリエAを揺るがした。
ものものしい機動隊を引き連れたトリノ地方検察の特捜チームが「ビバ・レイン」へ強制捜査に入ったのは、W杯もトルコと韓国の3位決定戦、ブラジルとドイツによる決勝戦を残すばかりとなった2002年6月27日の昼下がりだ。
地検は、売春斡旋容疑と麻薬所持容疑で店の経営者ら8人を逮捕、携帯番号や暗号名を記した顧客リストを含む証拠品や書類を大量に押収した。
「サッカー選手はよく通ってくれる上客だった」
震えあがったのはイタリア中のサッカー関係者だ。店へ通っていた選手の名が公になるのは必至で、世論の猛バッシングは避けられない。とりわけ複数の選手名が取り沙汰されたユベントスは頭を抱えた。
逮捕された娼館の女主人ティツィアナ・マリターノ(当時32歳)は、後に語っている。
「サッカー選手はよく通ってくれる上客だった。お金も筋肉もあるし。贔屓にされた女の子たちには、あんまり深入りしちゃダメと釘を刺したものよ」
今世紀初頭、イタリアの主だった都市に“アジア式マッサージ”を謳う店が急増、乱立した。駅前から一歩外れた界隈や繁華街の裏通りに並ぶピンク色のネオン照明を見れば、いかに登記上はマッサージ業であっても、その実態がいかがわしい生業だとは誰でも察しがついた。
ただし「ビバ・レイン」があったのは、教会や偉人の銅像が立ち並ぶ瀟洒な高級住宅街だった。
けばけばしい看板や呼び込みの姿は一切見当たらず、店が2階に入居していたレンガ造りのビルには、弁護士や会計士といった堅い職業の事務所が並ぶ。「ビバ・レイン」は知る人ぞ知るVIP御用達の高級風俗店だったのだ。
アルファベットで艶めかしく手書きされた「FUTON」
極東で初開催されたW杯に世界中が熱狂している間も、韓国でイタリア代表が涙を呑んだ日も、「ビバ・レイン」は代議士や俳優、そしてオフに入ったプロサッカー選手らがひっきりなしに訪れていた。
ガサ入れで押収された証拠品の中には、アルファベットで「FUTON」と艶めかしく手書きされた料金表がある。