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横浜DeNA牧秀悟はなぜ“ドラフト2位”指名だった?「よお2位で獲れたなぁ、あんなゴッツイの…」26年ぶり“日本一の主砲”がドラ1じゃなかったワケ 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/11/16 11:01

横浜DeNA牧秀悟はなぜ“ドラフト2位”指名だった?「よお2位で獲れたなぁ、あんなゴッツイの…」26年ぶり“日本一の主砲”がドラ1じゃなかったワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

日本一に輝いたDeNAの4番を打つ牧秀悟(26歳)。侍ジャパンでも活躍する「球界の顔」のひとりだが、実は2020年のドラフトでは2位指名だった

 事実、広島・菊池涼介、阪神・中野拓夢……今のプロ野球のレギュラーセカンドは、ほぼ「ショート出身」であり、一軍のゲームに出場しているセカンドの中で、ショートの経験がないのはソフトバンク・広瀬隆太選手ぐらいではないか。

 それほどに、アマチュア球界の「二塁手」に対するプロ側の評価は、選手個人に対してというよりは、ポジションに対して低いのであろう。二塁手イコール、肩が弱いのではないか、打てないのではないか。小柄で非力なのではないか。そんな固定観念のようなものが、野球界に浸透しているのも事実だろう。牧選手自身、中央大2年生まではレギュラーショートとしてプレーしていた。

 阪神・森下翔太外野手は、中央大時代、牧秀悟選手の2年後輩にあたる。

 ルーキーイヤーから日本シリーズで活躍し、2年目の今季、打率.275、16本塁打、73打点をマークして、タイガースのクリーンアップに定着した。

 その森下選手が、大学4年の時、こんな話をしてくれた。

「自分、牧さんが師匠だと思っていましたので、牧さんが練習やめるまで、自分も練習やめませんでした。牧さん、とにかくバット振るんですよ。暗くなって、もうやめるかな……と思っても、まだやめない。だから、自分もやめられない。やっと終わって、寮に帰って、部屋でひと息ついていたら、牧さんがやって来て、『納得いかんから、もう一度やろう』って、また室内(練習場)に行ったこともありました」

いまも記憶に残る大学時代の牧の「インパクト音」

 そして、今も耳に残る「音」。牧秀悟選手のインパクト音だ。

 松山・坊っちゃんスタジアムでの「学生ジャパン」の選考合宿。

 日本じゅうの学生野球リーグから推薦された腕利きぞろいの中でも、バッティング練習でのインパクト音は、牧選手だけが、まったく別の音に聞こえていた。

 無理やり擬音化すれば、「ガシャキーン!」。

 インパクトの力感やスイングスピードだけじゃない。打球を弾き返した木製バットの太さとか、重量感とか、木の強さとか、そういうことまでこちらに伝わってくるような異次元の快音。

 それは、いつまでも、ずっと聞いていたいような「サウンド」でもあった。

 ……と、そんな文章を書いていた15日の「プレミア12」一次ラウンド・韓国戦で、牧秀悟、森下翔太のバットが強豪・韓国投手陣を粉砕した。

 まず5回、二死から四死球3つで作ったチャンスに、師匠・牧秀悟が中前に逆転2点タイムリー。さらには7回、一番弟子の森下翔太がだめ押しとなる左中間2ランだ。プロ2年目にして侍ジャパンの4番に抜擢されて、大舞台で本領発揮の森下翔太も立派だが、この試合、勝ちを引っ張ってきたのは、逆転タイムリーの牧秀悟だ。

「さすが、ドラ1やなぁ……」

 再び、この耳によみがえってきたあの甲子園でのため息。牧秀悟、もう「ドラ2」じゃない。日本じゅうのみんなが間違えるような、押しも押されもせぬ「ドラ1」級に、たゆまぬ精進と烈火の気迫で、見事にのし上がってみせた。

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