確かに、前年の打率.260・30本塁打が、打率.228・13本塁打に急落。後釜問題が急浮上していたようだ。

「周東（佑京）が盗塁王獲った年でしょ。牧原（大成）もセカンドしっかり守っていて、欲しかったのはサードだったんじゃないですか」

　そして、「これは私見ですが」として、

「あの翌年から、ソフトバンクは急に正木（智也・慶應義塾大）とか、吉田賢吾（桐蔭横浜大）とか、広瀬（隆太・慶應義塾大）とか、牧タイプの右打ちを獲り始めましたよね」

意外にも2位指名だった牧　©︎JIJI PRESS

「前にどっかで聞いたんだけど」と、あるスカウトの方がこんな話をしてくださった。

「今、楽天にいる伊藤裕季也（内野手）っていう選手が、同じ東都（六大学）の立正大学で、ちょうど牧とよく似たタイプの、バッティングのいいセカンドだったんですけど、牧の、確か2年前に2位で（横浜DeNAに）入っているんですよ。

　学生時代、神宮のバックスクリーンに放り込んだり、足をケガして歩くのがやっとみたいな状態で決勝ホームラン打ったり、ものすごく勝負強いバッターで、結構やるんじゃないかっていわれて入ったんですけど、その頃（2020年当時）は、まだ、そこまでじゃなかった」

　それが牧選手の評価の足を引っ張ったっていうのもありますね……と付け加えてから、

「伊藤を獲って、2年後にまた牧でしょ、ベイスターズさん。これは、私の推測ですけど、牧を伊藤の刺激剤にして、『どっちか1人がレギュラーになってくれたら』っていうね。プロって、そういうとこですよ。ウチは3位評価でした」

いまではチームの主軸となった牧　©Nanae Suzuki

プロの発想「二塁手は遊撃手から探す」

　ちょうど、その頃だったろうか。ある地方球場で聞いたスカウトのつぶやきが、今も耳に残る。

　誰だか忘れてしまったが、ある高校生のセカンドを、私がすごく誉めていた時だ。

「果たして、セカンドの中からセカンドを探す必要があるのか、どうか」

　今でもその傾向ははっきりとあるが、プロ側の発想は「二塁手は、遊撃手の中から探す」である。つまり、優秀な遊撃手ぐらいの能力がなければ、プロの二塁手はつとまらないということだ。

【次ページ】　いまも記憶に残る大学時代の牧の「インパクト音」