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佐々木朗希(23歳)のメジャー移籍に“モヤモヤ”が残る理由…ロッテ入団5年でポスティングを容認したのは何故? その背景には何があったのか
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/16 17:00
ポスティング制度によるメジャー移籍を容認されたロッテの佐々木朗希(23歳)
「そうは言ってもロッテがサイドレターを取られた経緯を公表して、反故にすればいいだけではないか」という人もいる。しかしもし本当にそういうサイドレターがありそれを反故にすれば、訴訟を起こされる可能性がある。そうなると今度は選手契約そのものの独占禁止法違反問題まで蒸し返される恐れもあり、球界を揺るがす大問題に発展しかねない。
「だからロッテは移籍を容認せざるを得ないし、サイドレターの存在も決して公にはできないはずです」
それが取材の概要だった。
もちろん佐々木の移籍の背景にこうした“密約”が潜んでいるとしたら大問題である。ただこの証言だと今回の話の背景には、佐々木だけでなくさまざまな人物や組織が絡んでいることになる。
一番の懸念は今回の騒動劇にそういう人々や組織が関与しているのだとすれば、佐々木のケースで終わりではなく、今後も同じようなことが起こり得る可能性があることなのだ。
日本球界の空洞化が進む可能性
現在のポスティング制度では球団さえ容認すれば、入団1年目の選手でも理論的には移籍は可能となる。その抜け穴を通って、そういう人物が佐々木クラスの素材の選手にいち早く接触し、同じように入団の条件として3、4年での移籍をゴリ押しするケースが出てくるかもしれない。そうなれば今後の日本球界の空洞化が、一気に進む可能性を否定できないだろう。
このオフもドラフト候補だった桐朋高の森井翔太郎内野手が日本のプロ野球を経由せずに、直接メジャー球団との契約を目指して交渉していることが話題となっている。それは選手の1つの決断であり、その決断は支持したい。マイナーから厳しい環境のなかで競争を勝ち抜いてメジャーリーガーとなることを目指す。その勇気と気概はあっぱれだ。
しかしとりあえず日本の球団に入団して、3、4年、食住に練習施設、設備も充実した寮に入って体作りから技術の研鑽を重ねて、一軍に上がって実戦経験を積む。そうして選手としてある程度出来上がったところで、メジャーに挑戦することができるとすれば……。
どちらが選手にとって安全で確実なのかはいうまでもないだろう。そしてそれは高い素質の選手にとって日本の野球が、本当にメジャーの踏み台となるということだ。
ポステティング移籍の制限を検討すべき
だからNPBはポスティング制度での移籍に、何らかの制限をかけることを早急に検討すべきだろう。