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「オリックスのスカウトがものすごい熱量でした」“193cmの無名ピッチャー”、オリックス3位指名で泣いた…プロ野球9球団から調査書、監督は「3位で悔しいと思って」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2024/11/19 17:02
オリックスに3位指名された山口廉王(仙台育英)。指名直後の会見で大粒の涙を流した
「自分は嬉しくないです。ぜんぜん違うと思うんですけどね。佐々木朗希選手は足を畳んでいますけど、僕は畳まない派なんで。足を上げる理論もぜんぜん違うんですよ。だから2世みたいな言い方はやめてほしいんですけど、みんな使っちゃうんで」
ドラフト会議を前に知り合いの記者に山口は何位ぐらいで指名されそうなのかを尋ねると、判を押したようにこう返された。「わかりません」。あまりにも参考データが乏しく、評価しようがないというのが理由のようだった。
山口のもとには事前に9球団から調査書が届いていた。つまり、少なくともそれだけの球団が関心を示していたということだ。
「ネクタイもスーツもワイシャツも…」すべて紺色だった
前日、須江にどこの球団がもっとも指名の可能性が高そうなのかを尋ねると、パ・リーグの球団であることは示唆してくれたものの、それ以上は教えてくれなかった。
だが、翌日、須江はその答えを全身にまとっていた。
ドラフト当日、須江は光沢の入った黒に近い紺色のネクタイを締めていた。須江にそのネクタイの色は何か意味があるのかと尋ねると「関係ありますよ」と即答した。
「ネクタイだけじゃないですよ。スーツも、ワイシャツも、靴下も、時計も。パンツもです。見せられないですけど」
ワイシャツは黒に見えたが紺色だったようだ。3ピース仕立てのスーツは濃紺、時計の樹脂製バンドは明るい紺色。まさに全身、紺尽くめだった。
パ・リーグで濃紺を基調とするカラーの球団といえば1つしかない。西武もユニフォームこそ紺色だが球団カラーと言えばスカイブルーのイメージがある。
事前に須江からそんな話を聞いていたため、われわれ報道陣はオリックスの順番になるといやが上にも緊張感が高まった。
「オリックスのスカウトがものすごい熱量だった」
3巡目でオリックスからの指名を受けた瞬間、オーバーアクションを繰り返した山口とは対照的に、須江は終始、冷静だった。その直前、須江は目を閉じたときに、じつは予感があったのだという。