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「オリックスのスカウトがものすごい熱量でした」“193cmの無名ピッチャー”、オリックス3位指名で泣いた…プロ野球9球団から調査書、監督は「3位で悔しいと思って」
posted2024/11/19 17:02
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kei Nakamura
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《最後の夏、宮城大会決勝の先発を任された山口廉王。しかし聖和学園相手に敗れ、甲子園出場を逃す。そこからオリックスが3位指名するまでに何があったのか?》
本格的な成長は秋に訪れた。10月にブルペンで撮影した投球の様子を動画で見せてもらうと、夏までの山口とは別人に見えた。大きな体をもてあましている感じが消え、完全に繰っているように映った。腕がムチのようにしなり、ストレートは指先からミットまで物差しを当てて引いたような軌道を描いていた。素人目にもこのピッチャーがプロに行かなかったら誰が行くのだろうと思えた。
山口いわく、常時、「150kmぐらい出ている感覚がある」そうだ。
「夏休みの期間も毎日、学校に来て練習していたんで。自分を見つめ直す時間もたくさんあって、昨日より今日の方が成長できているという実感があった。腕の使い方とか、後ろ足に体重が乗っている感じとか。変化球もストレートもピッチトンネル(ボールの通り道)が一緒になってきましたし。ずっとピッチャーをやってる人は、もっと早い段階でそういうのに気づいているものなんでしょうけど」
9球団から調査書…スカウト「責任者を連れてきます」
その頃、スカウトの反応も明らかに変化してきた。須江の証言だ。
「9月くらいに来てくれたスカウトの方は、次くるときは責任者を連れてきます、という感じだったんです。なので、山口の成長にそれぐらい感じるものがあったのだと思います」
仙台育英にピッチングコーチはいない。須江もフォームに関しては、ほとんど何も言わないという。したがって現在の山口のフォームも自力で作り上げたものだ。
山口は左足を胸の位置くらいまで高く上げていた時期がある。そのため、スポーツ新聞の記者に「朗希2世」と命名された。だが山口はこう強い自我をのぞかせた。