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「オリックスのスカウトがものすごい熱量でした」“193cmの無名ピッチャー”、オリックス3位指名で泣いた…プロ野球9球団から調査書、監督は「3位で悔しいと思って」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2024/11/19 17:02
オリックスに3位指名された山口廉王(仙台育英)。指名直後の会見で大粒の涙を流した
「オリックスのスカウトの方からは、ものすごい熱量を感じていたんです。山口を育ててみたい、という。だから、この流れなら3位で指名もあるかなと。ダメでも4位ぐらいだと思っていたんです。ただ、そんなことは山口に言ってないですよ。がっかりさせてもかわいそうなので。ドラフトに絶対はないですから」
指名直後、須江はカバンから用意していたオリックスのキャップを取り出し、山口に被らせた。まさに相思相愛だったわけだ。
「3位で悔しいと思って欲しい」
山口の指名が確定すると、すぐに記者会見の準備に移った。須江は終始、冷静を装っていたものの、こんな言葉から彼も上位指名に歓喜していることがうかがえた。
「司会は存在しません! 僕が司会をします。ははははは。ちょっとお待ちください」
そこから会見は実に40分近く続いた。異例の長さである。エンターテイナーでもある須江らしい対応だった。
その中では、あくなき向上心の持ち主である須江からこんな言葉もあった。
「(山口が)泣いてたんで、ちょっと言いづらくなっちゃったんですけど、今日は本当は最後に、悔しいと思って欲しいなという話をしたかったんですよ。春先は自分次第でもう1つ2つ上の(指名)順位になれるくらいの才能を発揮していたわけだから。3位で悔しいなと思っていて欲しいなと思っています」
山口は3人兄弟の長男で、中学2年生の弟と中学1年生の妹がいる。弟は身長175cmでがっしり体型、妹の身長も160cmとやはり大きい。この日の夜は、両親を含めて家族5人で回転寿司屋でお祝いをする予定だと話していた。
咄嗟にどれだけ食べる家族なのだろうと思ったところ、須江がすかさず山口に尋ねた。
「親目線になるけど、どれぐらい食べるの? 心配になっちゃって」
「40皿ぐらいですね」
机にうずたかく積まれた皿の塔がいくつも並んでいる光景が思い浮かんだ。それもまたロマン溢れる絵だった。
<前編、中編から続く>