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小久保裕紀監督「日本シリーズは3敗できる」の落とし穴…“有原続投、スチュワート投入”ソフトバンク采配の「余力」がDeNAの「全力」に飲み込まれたわけ
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/11/08 17:00
シーズンを圧勝したソフトバンク・小久保監督の采配が日本シリーズでかみ合わなかったのはなぜだったのか
「必死にやっているだけですよ。いつも言っていますけど、全部出し切って勝負できるかどうかだと思っています。なりふり構わず、必死に。毎試合、毎試合、全員が出し切って終わったら、明日に向けて準備しようって。それだけです」
戦い方もはっきりしていた。
とにかく試合が終わるまで、全イニングにおいて、采配も、選手たちのパフォーマンスもベストを尽くす。三浦監督は局面局面での最善の策を講じ、選手は必死に応えていく。当然、一人の力ではどうにもならないことがあり、そこは交代選手が代役を務めて埋め合わせをしていく。
第1戦は9回裏を迎えて0-5のビハインドだったが、それでも諦めずに3点を返して一矢を報いた。第2戦も4回までで6失点した。しかし、後半に追い上げて結果は3-6というゲーム。これが後々に生きた。
「日本シリーズですからね」
舞台を福岡に移した第3戦から形勢は逆転した。DeNAの先発投手がゲームを作って、第1戦、第2戦の戦いを生かしての後半勝負に持ち込むと、勝機が訪れた。「流れ」はそうして変わった。
第3戦の先発・東克樹が7回1失点、第4戦のアンソニー・ケイ、第5戦のアンドレ・ジャクソンが、ともに7回を無失点。そして後半からの得点力でリードを広げるという、完璧な試合運びを見せた。できることを全力でやり切った結果としての形勢逆転。2勝2敗で迎えた第5戦の先発に、中4日のジャクソンを立てたことも、現有戦力でできることの最大値を出し切ろうという決断だった。
「日本シリーズですからね。ジャクソンも前回の登板の後にすぐ確認して、コンディショニング次第ではいけるという話でした。本人のリカバリーと、トレーナーやコンディショニングコーチ、ピッチングコーチもそうですけど、周りのケアもあって、今日は(マウンドに)上がれたということです。まだ終わってないんでね、今日の試合を勝てた意味というのはわかっています。先制点を取ることを意識してやっていますし、それと同時に先発陣がしっかりとゲームを作っているからこそ、先に得点が取れるとも言えるんですよね。そういう試合ができたのは大きかったですね」
第5戦を終えての三浦監督の発言一つ一つからは、熱量が伝わってきた。