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小久保裕紀監督「日本シリーズは3敗できる」の落とし穴…“有原続投、スチュワート投入”ソフトバンク采配の「余力」がDeNAの「全力」に飲み込まれたわけ
posted2024/11/08 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Naoya Sanuki
日本シリーズの優勝が決まったあとの取材は慌ただしい。
日本一チームは胴上げあり、優勝インタビューあり、セレモニーあり、グラウンド一周あり、ビールかけありと行事が多いからである。ナイター開催ではほとんど時間がない。一方、敗れた側は敗因を分析するような言葉もなく、手短に終わっていくというのが通例だ。
何年前だったか。優勝が決まった日の試合の決勝点がスクイズだったことがあった。あまりにも見え見えだった作戦を、敗軍の将に「予測していなかったのか」と尋ねたら、筆者のこめかみを貫通せんばかりの鋭い視線で睨みつけられたことがある。
日本シリーズという大舞台。繰り広げられた試合は、当然、勝者と敗者とを分かつことになるが、その原因を分析してこそ、野球の奥深さを知ることができる。それを伝えるのが我々の役目だと思うが、現状、敗者はそっとしておこうという空気がある。
「流れ」は勝手にやってくるのか?
さて、2024年の日本シリーズはセ・リーグ3位のDeNAが、パ・リーグを圧倒的な力で制覇したソフトバンクを破るという、なんともドラマチックな結末を迎えた。
なぜ、ソフトバンクはDeNAに勝てなかったのだろうか。
「雨で中止になって『流れ』が来るかなと思いましたけど、来なかったですね」
そう振り返ったのはソフトバンクの小久保裕紀監督だった。
スポーツに存在する「流れ」というものは度々議論にもなるが、「流れ」とは小久保監督がいうように、勝手にやってくるものなのだろうか。それとも、自ら手繰り寄せられるものなのだろうか。
このシリーズ中の、まるで達観したような小久保監督のコメントからは、シーズン中と同様の戦い方に終始しているような雰囲気を感じていた。第1戦終了後の勝利監督インタビューでの、「日本シリーズは3敗できる」という発言もどこか、「流れ」の存在を自覚しながらも、全体の帰趨については楽観しているようにさえ聞こえた。
一方のDeNA・三浦大輔監督は明快だった。
誰もがそのコメントを予測できるくらい、指揮官の言葉は一貫していた。