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小久保裕紀監督「日本シリーズは3敗できる」の落とし穴…“有原続投、スチュワート投入”ソフトバンク采配の「余力」がDeNAの「全力」に飲み込まれたわけ
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/11/08 17:00
シーズンを圧勝したソフトバンク・小久保監督の采配が日本シリーズでかみ合わなかったのはなぜだったのか
第6戦のソフトバンクは、第1戦で好投したエース格の有原航平が先発。当然、ソフトバンクが優位に試合を運んでもおかしくなかったが、2回裏、DeNAの5番・筒香嘉智がバックスクリーン右に豪快な一発を叩き込み1点を先制。さらに、下位打線でチャンスメークすると、1番桑原将志の左翼適時打で2点を追加した。
もう一つも負けられないソフトバンクの方が、追いかける形となった。
ここからソフトバンクが巨大戦力を武器に巻き返してくるかと思ったが、8番から始まる3回表の攻撃で、ここまでのシリーズでノーヒットの甲斐拓也、9番ピッチャーの有原にも代打を送らず。結局、反撃姿勢を取ることなく3人で攻撃を終えてしまった。後がないはずのソフトバンクは、有原の奮起を待っているようでもあった。
有原の続投、スチュワートの投入
しかし、その裏、有原は期待を裏切る形となる。安打と四死球などでピンチを作ると、最後は押し出し四球で失点を献上してしまったのだ。この時点で0-4。続投は完全に裏目だった。
それでも4回表に、柳田悠岐が走者を1人置いて2ラン本塁打を叩き込む。ソフトバンクは4回裏にようやく、有原に代えてリリーバーの尾形崇斗を投入。尾形は無失点で相手の攻撃をひとまず堰き止めた。
しかし、DeNAも手綱を緩めなかった。5回表には先発の大貫晋一をスパッと代えた。ソフトバンクに向いた少しの「流れ」を断ち切る決断をしたのだ。投入したのは左腕の濵口遥大。その濵口は自らの役割をしっかり理解しているように、全力で腕を振って三者凡退に抑える。最後は雄叫びを上げながらベンチに戻る姿を見せ、これに球場全体が盛り上がった。
そして5回裏に、DeNAが猛攻を見せる。
ソフトバンクはこの回、カーター・スチュワート・ジュニアをマウンドに上げた。第3戦で先発し、4回3安打3四球1失点で降板。不安定なピッチングを見せた印象は強い。制球にやや難があるスチュワートに、ここでDeNAの勢いを止めろというのは荷が重いと感じられた。