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「清原正吾と一緒にドラフトを最後まで見た」慶大の監督が明かした“清原正吾の進路”「野球をやめると思う」発言の真意「初めて口にすることですが…」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byYuji Yanagawa
posted2024/11/04 18:11
今年のドラフト会議で清原正吾の名前が呼ばれることはなかった
実質、本格的に野球に取り組んだ大学4年間の経験だけで、最後のリーグ戦で2本塁打を放ち、プロ志望届を提出した。初めてのドラフト会議で自分の名前が呼ばれなかったからといって、すぐに夢を諦めるのは早計ではないか。
「正吾はこの4年間、人知れず努力して、苦労を重ねて、大学4年間で燃え尽きるという覚悟で野球に取り組んで来た。その結果が、支配下で指名されるという形に結びついたら、もう一度、自分を奮い立たせられるんだけど、そこまでの評価がないのであれば別の道を模索した方がいいと判断したのかもしれません。そう思えるぐらい、彼はこの4年間、苦しい思いをしてきたんだと思います」
「家族の中での役割を終えたと思っている」
正吾には忘れられない父の偉大な姿がある。オリックスに在籍していた父の引退試合だ。父と同じ舞台に立ちたいと夢に見て野球をはじめたものの、中学に上がるタイミングで野球から離れた。薬物騒動を起こし、母と離婚した父と距離を取るためであり、「清原」の名前が否応なくついてまわる野球をやめて欲しいという母・亜希の願いに応えるためだった。そして、薬物依存や病気から立ち直ろうと努力する父の励みになればと思って正吾が再開したのもまた野球だった。
いわば正吾は父の背中に憧れて野球を始め、家族のために野球から離れ、そして家族のために野球を再開したのである。正吾は自分のために大好きな野球をやってきたわけではない。
「そう、そこなんです。僕自身も初めて口にすることですが、正吾は大学4年間をやりきったことで、家族の中での役割を終えたと思っているんじゃないかな。ここからは家族のためではなく、自分のための人生を送っていきたい。そういう発想がつまり、野球をやめるということなのかもしれない。これから自分は何をやりたいのか。そう思い悩んでいるのが今だと思う。あくまで個人的な意見を言わせてもらうならば、これからは正吾自身のために野球を続けて欲しい」
プロ野球選手になるために、高校生や大学生はプロ志望届を提出する必要がある。
正吾は本来の目的とは別に、野球人生の区切りとしてプロ志望届を提出したのではないだろうか。その結果、指名されることがなければ新たな人生に舵を切るんだ——と。
〈つづく〉