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「カメラマンの“あーあー”という表情が見えて」ドラフト生中継でまさかの指名漏れ…ロッテ・佐藤都志也が振り返る「一人で泣いたあの日」
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byKYODO
posted2024/10/24 11:01
ドラフト会議で指名を待つ東洋大時代の佐藤都志也
あの日、指名を受けていたら…
人生とは不思議なものだ。もしあの日、指名を受け、なんの挫折も味わうことなくプロの門を叩いていたら、いったいどうなっていたのだろうか。それは誰も分からない。ただ本人が「井の中の蛙だったと思う」と言うように順風満帆だった若者にとって少しばかり厳しい現実が待っていたのは間違いない。
遠回りをしたが、結果的にそれが良かったと佐藤都は今、ハッキリと言い切れる。色々な事を学んだ。素晴らしい先輩たち、同級生、後輩たちと出会い、成長した。悔しさから這い上がった。そしてここにたどり着いた。
24年7月24日、神宮球場で行われたオールスターゲーム。5安打を放った佐藤都がMVPを受賞した。球団では村田兆治投手以来、実に35年ぶりという快挙だった。大学時代の4年間、悔しさをバネに成長した球場で12球団ファンの喝采を一身に受けた。結果的に今年は、パ・リーグ打撃部門4位の.278をマーク。侍ジャパンのメンバーに名を連ねるまでになった。
悔し涙は「ボクの原点」
「色々な支え、色々な力を借りながらここまで来た。今年の事は自信にはなった。ただ、これからはこれがベース。来年が大事になる」と佐藤都。そして今年もドラフトの日が近づいてきた。ZOZOマリンスタジアムで侍ジャパン合流に向けて汗を流す男は「そこは色々な意味でボクの原点の日」と話すと、遠くを見つめた。
涙したあの日と、笑う事が出来たあの日。月日は流れた。若者は心身ともにひと回りもふた回りも大きくなった。そして今年もまた、この日を迎えた。