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「僕が勝たせてあげられなかった…批判は受けます」日本シリーズ進出を逃した巨人・阿部慎之助監督の“経験不足”…敗れるなりの理由があった
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/22 19:00
CSファイナルでDeNAに敗れ日本シリーズ進出を逃した巨人の阿部慎之助監督
ここで増田を代走に送れば、盗塁という一手も考えられるし、DeNAバッテリーの配球も真っ直ぐ系を軸にしなければならなくなってくる。何より1点負けている状況を考えれば、その1点をもぎ取るために全ての策を尽くすべきであり、尽くすのが阿部野球だったはずだ。シーズン中の阿部監督なら、ほぼ抜かりなく代走を送っていた場面。結果的には秋広があっさり3球で空振り三振に倒れて、何も起こることはなかった。
ただ、シリーズを振り返ってみれば、こうした細かなベンチワークのほつれがいくつかあったことは見逃せないところだった。だから「9月からはベンチの戦いや」という星野監督の言葉を思い浮かべることになったのである。
チーム、監督の経験不足
結果的には最初の3連敗がすべてだった。
「そこがやっぱり(敗退に)響いちゃいますよね。だけどやっぱりこうやって逆王手までいって……いったということも、すごい収穫だと思います。負けた悔しさはその何十倍もあるんですけどね」
阿部監督はこう語って取材を終えた。
球団創立90周年のメモリアルシーズンで見事にペナント奪回を果たした。監督1年目で見せたチームを掌握する力、思い切った選手起用、采配力……。もちろん選手の働きが一番の力だが、この監督がそういう選手の力を引き出した手腕、マネジメント力は改めて高く評価されるものだろう。ただまだまだチームにも、ベンチにも、経験が不足した。来季に向けてこの経験をどう活かしていくか。そのことを改めて教えてくれた巨人の敗北でもあった。