バレーボールPRESSBACK NUMBER

「胴上げで泣くのは日本人だけ」負けたのに、なぜブラン監督は3度も宙を舞ったのか? 提案者が語る“ボスへの感謝”と“奇跡の集合写真” 

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

PROFILE

photograph bySankei Shimbun

posted2024/09/27 11:06

「胴上げで泣くのは日本人だけ」負けたのに、なぜブラン監督は3度も宙を舞ったのか? 提案者が語る“ボスへの感謝”と“奇跡の集合写真”<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

話題となったブラン監督の胴上げは、伊藤コーチの提案によるものだった

 激闘からもうすぐ2カ月、それぞれが新たなシーズンに向けて動き出している。まもなく開幕するSVリーグに向けて練習を再開した者、海外で新たなステージに挑む者――それは選手だけでなくスタッフ陣も同様で、これまでとは違う職務への準備も始まっている。

 現地パリでブラン監督や全15選手のインタビューを撮った岸も、一人一人の言葉を噛みしめながら、“日本代表”の日々を振り返る。

「(オリンピック出場が決まった時は)選手に近い目線で撮ったから、僕の画角はブレブレ。プロとして見たら最悪です。でもそれが一番近くにいるからこそ撮れる画だし、いわば子どもの運動会でビデオを回すお父さんみたいな気分で(笑)。ネーションズリーグのメダルを獲得した時やオリンピック出場を決めた時は自然に泣けてきたし、僕もこのチームのファン。自分の好きなものをたくさんの人が好きになってくれるのが素直に嬉しかった。まだまだやりたいこと、関わりたい気持ちもありますけど、僕も若い子たちに継承していかないといけないですから」

 誰に聞いても、真っ先に出るのは「良いチームだった」という証言ばかり。写真や映像を見返せば、それが真実であることはいくらでも伝わってくる。

 だが、心からそう思うからこそ「良いチームだった」で終わらせるのではなく、新たな未来につながなければいけない。それも“日本代表”が果たすべき役割で、大切なのは「これから」だ。

 8月16日、退任するブラン監督は日本バレーボール協会を通してコメントを寄せた。目標に届かなかった悔しさと、的確な分析。「友」と記したスタッフと選手に向け、丁寧に言葉を紡いだ。

 いつか、「あのイタリア戦があったから」と言える日に、指揮官の残した言葉を噛みしめたい。

「ファンの皆さんと日本のバレーボール界は、このチームを誇りに思うことができると信じています」

〈全3回・完/第1回から続く〉

#1から読む
「ブランは人を大切にする監督だった」男子バレー“重宝された5人のプロ”が語る、敗れても愛される日本代表の全貌「仲良くするのは今じゃない」

関連記事

BACK 1 2 3 4
フィリップ・ブラン
伊藤健士
行武広貴
村島陽介
坂本將眞
岸翔太郎
石川祐希
高橋藍
西田有志
関田誠大
パリ五輪
オリンピック・パラリンピック

バレーボールの前後の記事

ページトップ