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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「追いつけない自分が悔しかった」“静かなるエース”宮浦健人が明かしたライバル西田有志への本音…躍進続く男子バレー〈エリートの逆襲〉
posted2023/09/07 11:16
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Yuki Suenaga
西田有志が「動」ならば、宮浦健人は「静」の人だ。
どれほど強いインパクトを残すスパイクを放とうと、ド派手なパフォーマンスを見せることなく、むしろ淡々と。表情を変えず、グッと拳を握る。喜びも、悔しさも、派手なパフォーマンスで魅せる西田とは異なり、静かに噛みしめる姿は学生時代からずっと変わらない。
だから、心底驚いた。
自らのスパイク、ブロックで得点を獲った後、拳を握りしめ、宮浦が叫んだ。それどころか、スタンドへ向け「もっと盛り上がれ」とばかりに両手を下から上へ、歓喜を分かち合う。
解放か、覚醒か。問うと、恥ずかしそうに笑いながらもプロとしての意識を覗かせた。
「もともとそんなに感情を出すタイプではないし、いろんな人からびっくりしたって言われます(笑)。でも自分の気持ちも上げていかないといけないし、特に(試合に)途中から入る以上は、周りと同じ温度で自分も高めないといけない。意識的に叫ぶようになりました」
準備を怠らなかった宮浦にチャンスが
男子バレー日本代表が主要国際大会で46年ぶりとなる銅メダルを獲得したネーションズリーグの序盤、宮浦はベンチスタートだった。
いついかなる時に呼ばれても万全の状態でコートに立てるように。ベンチの選手は試合の状況を見て、コートに立つ選手へアドバイスを送りながら、各々のリズムで身体を揺らし、小さくジャンプしながら、その時を待つ。チューブでインナーマッスルに刺激を加え、血流を促進する。スタンド上段の記者席から見ても、宮浦のその行動一つ一つから「いつでも行けるから俺を出せ」という声が聞こえてきそうなほど、常に準備は整っていた。
出番は次第に途中出場からスタメンへ。高い打点からのスパイクと勝負所でのサービスエース。一見すれば派手にも見えるプレーの数々は、重ねてきた努力と強さをこれ以上ないほど証明するものだった。