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「胴上げで泣くのは日本人だけ」負けたのに、なぜブラン監督は3度も宙を舞ったのか? 提案者が語る“ボスへの感謝”と“奇跡の集合写真”
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2024/09/27 11:06
話題となったブラン監督の胴上げは、伊藤コーチの提案によるものだった
宿舎に戻る帰りのバス。伊藤はブランに「胴上げを知っていたか?」と尋ねた。すると、ブランは「インカレを見に行った時に、学生がされていたな」と答えた。大学リーグまで隈なく日本バレーを見つめてきた指揮官は、少なからず日本の伝統でもある胴上げの意味を知っていたのかもしれない。伊藤は補足するようにこう伝えた。
「感謝の意味を込めてするものなんだ。本当は勝って胴上げをしたかったんだけど、できなかった。でも感謝の意味を込めて、全員で胴上げしたんだ」
“最高のチーム”の証明する集合写真
試合後のコートで撮影された集合写真には、パスを持つ選手、スタッフだけでなくメンバー落選後も帯同した小川智大やエバデダン・ラリーら全員の姿があった。本来であればフロアに降りることはできなかったが、会場にいた日本人のボランティアがセキュリティスタッフを説得し、撮影が許された奇跡の一枚だった。
笑顔と涙が入り混じった一枚は「最高のチーム」であったことを表すものなのだが、坂本將眞マネージャーには、また別の感情があったと笑う。
「(写真を撮影して)後で怒られたらどうしよう、と思うと急に頭が冷静になっていました(笑)。負けたら2日後には選手村を出なければならないので、退村準備やフライトの確認……(写真に収まりながらも)やらなければならないことが次々頭に浮かんできました」
再び全員が一堂に会したのは、イタリア戦の夜。翌日、ブランがチームを離れることを知ったS&Cコーチの村島陽介が、選手村近くのレストランで行われた食事会を発案した。さらにその翌日、今度は坂本が選手村のパスを申請し、監督を除く日本代表の選手とスタッフ全員でモニュメントの前で記念撮影を行った。
金メダルを目指した、日本代表の戦いが終わった。