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「ここで出さないなんてもったいない」男子バレー“運命の第3セット”…予選敗退の危機が迫る中で一体何が? 現地記者が見たギリギリ突破の舞台ウラ
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byReuters/AFLO
posted2024/08/03 17:22
予選ラウンド最終戦でアメリカに敗れるも、決勝トーナメント進出を決めたバレーボール男子日本代表。高橋藍(写真)の復調もプラス材料だ
運命の第3セット。このセットを落とした瞬間、金メダルという目標を大きなターゲットにしてきた日本代表のパリ五輪が終わる。もはや後がない状況だ。
とにかくやるしかない――。誰もがそんな強い思いで第3セットへ気持ちを新たにしていた。
「なんとしてでも勝って、自力で決勝トーナメントにいきたかった。他力本願ではそれが叶わないことも分かっていた。0-2と厳しい状況でしたけど、自分たちの力で勝ち抜くこと、それだけにフォーカスしていました」(山本)
「周りの皆さんの期待ももちろんですが、なによりも、僕たちがこのバレーボールを楽しんでやった上で、自分たちが思うような結果を出すこと、それを目標にずっとやってきました。積み重ねてきた時間の分の想いを、このコートで出さないなんてもったいない。みんな口には出していなかったけれど、そういう共通認識があったと思います」(高橋)
石川祐希に代わって投入された大塚達宣
大塚は、いつもよりも少し暗く感じたというチームの雰囲気を変えようと、「まずは目の前の1点を全力で取りに行くこと」を心掛けた。
第3セット、石川祐希にかわってコートに投入されると、力強いスパイクを決めるなど攻撃の中心となって躍動した。
得点が決まれば雄叫びを上げ、チームの士気を上げた。
さらに西田有志のバックアタック、山内晶大のブロックなど攻撃の手を緩めず日本はこのセットをものにした。大塚が振り返る。
「得点をとったら全員で喜んで、そういうところから相手にプレッシャーをかけられたらなという思いはありました。1、2セット目は日本に得点が入っても盛り上がりがなくて、相手に簡単にプレーをさせてしまっていた。相手も常に先行する戦いのなかで、日本は簡単にサイドアウトを切られてという展開が続いて、アメリカに全くプレッシャーを与えられていなかった。そう状況を変えたいと思っていましたね」
第3セット、チームの雰囲気が明らかにかわったことを、高橋藍も実感した。
「コート中の雰囲気も、この1セットを取ってやるところで、出だしからいい雰囲気でやれていましたし、吹っ切れた部分もその3セット目はあったのかなと思います」