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「MVPは今永昇太」MLB投手前半戦を五十嵐亮太が徹底総括!「ドジャースの山本由伸獲得は正解」「敢闘賞に挙げたい松井裕樹、その理由は…」
posted2024/07/16 17:08
text by
五十嵐亮太Ryota Igarashi
photograph by
Getty Images
前半戦で最も明確な答えを出した今永昇太
MLB1年目の前半戦というのは本当に難しいものです。NPBで築き上げてきた自分の武器や強みが通用するのか。未知なる相手と戦うのに新しく武器となるものはあるのか。対戦する強打者の反応を見てそれらを探りつつ、自分のピッチングのスタイルを作り上げていかなければいけません。
難しいのは、その作業をしながらもまず結果を出さなければいけないということ。厳しい競争の世界ですから、いくら大型契約で移籍したとしても結果が出るまで悠長に待っていてはくれません。スタートで結果を出せないと色々なことを試す時間もなくなり、どんどん追い込まれてしまう。そういう意味ではキャンプやオープン戦を通じてある程度、自分が生き抜いていくための道筋を描いておくことが必要になるのです。
未知なる世界を切り拓くためにどんな“地図”を準備していたのか。それが結果に反映される前半戦において最も明確な答えを見せてくれたのは、カブスの今永昇太投手でした。
◼️【前半戦MVP】今永昇太(シカゴ・カブス)
17試合8勝2敗、被本塁打12、奪三振98、自責点32、防御率2.97、WHIP1.11
彼は2月のキャンプから徹底的に「高めのファーストボール」を意識してフォーシームを投げ込んでいました。打者を打ち取る形として“地図”に描いていたのは「高めのフォーシームで空振りやファウルを奪ってカウントを有利に進め、スプリット、スライダーなど低めの変化球を組み合わせていく」というものです。
これが見事にハマり開幕から圧倒的な投球をするに至ったわけですが、凄いのはそこからでした。この形が攻略されることを見越して、彼はあえて自分で「分岐点」を作った。ある程度出力を抑えることで長いイニングを投げていましたが、そこに対応されてしまうことを見越して出力を元に戻し、まっすぐ高めだけではなく、両コーナーや低めも含めて、抑えるスタイルのバリエーションを変えてきた。
シーズン前から地図=ビジョンを描いていた
7勝を挙げて迎えた6月22日のメッツ戦は3回10失点。続く28日ジャイアンツ戦では6回3失点と苦労しましたが、この2試合とて単純に相手に「打ち込まれた」のではなく、今永投手が自ら次につながるステップを踏んだ結果なので決してマイナスではないんです。変えてダメなら元に戻したり、尚且つ新しいものを加えて味付けを変えてみたり……。今永投手の絶妙な上手さで、結果的に新しいスタイルを導き出すことに成功しました。