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甲子園の風BACK NUMBER
170cmの小柄でも…甲子園で準優勝“大谷翔平超えの二刀流”だった光星学院・城間竜兵(29歳)の今「社会人野球ではもうベテランなんで」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/07/12 11:00
東北のライバルとして高校時代の大谷翔平と何度も顔を合わせた青森・光星学院(当時)の城間竜兵。社会人野球のパナソニックで現役を続ける
その後、捕手を務めていた田村龍弘(現ロッテ)がマウンドに来て「どうする?」と問われたという。
「あの時はもう、抑えられる気がしなくて。『無理やろ』って思わず言ってしまって敬遠したんですけれど、結局確か3打数で2安打されました。どの球種も打たれていましたし、本当に抑えられるボールがなかったです」
バッターボックスにいる大谷は、ただでさえ大柄な体格が一層大きく見えた。何よりその所作が今も頭にはっきりと記憶されている。
「ボールの見逃し方から雰囲気が違うんですよ。今のメジャーでの姿もそうですけれど、打ちに行こうとして見逃すという感じではないんです。でも、急にバットが出てきて思いっきり振り切られて飛んでいくので、あの時、これはちょっと厳しいな……と」
当時の城間の目に映る大谷は、バッターとしての凄さが何より衝撃だった。
3年夏の県大会で160kmを叩き出す投手・大谷の映像を目にし「今となれば……そりゃ二刀流でメジャーで活躍しますよね」と笑うしかないが、「これから大谷はどこまでいってしまうんやろう」と、恐怖すら抱かせた“怪物”の一挙手一投足の衝撃は、準優勝で終わった夏の甲子園後もどこかに残っていた。
高校日本代表では大谷と同部屋に
その後、高校日本代表に大谷と共に城間も選出された。
同じ練習着を着て、練習では一緒に汗を流す。共に行動していくと、今まで見たことがなかった大谷の一面が目に留まることが幾度もあった。
「高校生って、練習していたらどこかで手を抜きたいとかサボりたいとかあると思うんです。でも大谷はいつも一生懸命。練習に対するストイックさや取り組み方がとにかく真面目だったことが、高校生ながら強く印象に残っています。それはおそらく、花巻東でもずっとやっていること。じゃないとあんな選手にならないでしょうしね」
遠征先の韓国・ソウルでの宿舎では城間は大谷と同部屋になった。実はここまで多くの衝撃を受けながら、大谷とはまともに会話をしたことがなかったという。だが、周囲の目のない、素の姿の大谷はいい意味で想像を裏切ることばかりだった。
<次回へつづく>