辛辣なファンの罵声「駒田、お前はもういいよ！」

　駒田の自著『問いただす“間違いだらけ”の打撃指導』（ベースボール・マガジン社）には、次のように記されている。

　僕はプロ入り4年目の84年、一本足打法を習得しようと王さんの師である荒川博さんのもとに弟子入りし、練習したことがありました。しかし、結局ものにはできませんでした。

　それは一本足で完全に立った状態を維持できなかったのが最大の原因です。王さんはそれができたということです。

　駒田が振り返る。

「一本足打法には丸1年取り組みました。でも、85年の4月、開幕1週間が経ってファームに行くことになったときに、“このままじゃ結果が出る気がしない”と、自分なりに考えてやめることを決めました。あの当時の自分の器では、コップから水があふれている状態で、あれ以上、詰め込むのは技術的にも精神的にも無理だったんでしょう。王監督と荒川さんには非常に迷惑をかけたと思います……」

1985年2月、キャンプで一本足打法に取り組む駒田徳広を見つめる荒川博（左）と王貞治監督（右）　©KYODO

　恩師に迷惑をかけてしまったこと。1年の回り道を経験したこと。駒田はますます「考える人」になっていった。

「別に二本足で打てるという確信もないまま、真っ暗な状態でやめているから、このときは“これからどうしよう”という思いだけでしたね。ファンの方の僕への期待感。このとき、それが顕著になくなりましたね（苦笑）。その間に吉村（禎章）はレギュラーになっているわけですよ。でも、僕は一軍と二軍を行ったり来たり。たまにライトで吉村と一緒にノックを受けていても、“吉村、お前は頑張れよ！　駒田、お前はもういいよ！”って、よく言われました」

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